第四十三話 猟犬、襲来
地球のこと。
日本のこと。
愛すべき家族や友人との日常などなど。
言葉を選びながら、あたしが話している間、暁姉上は黙って聞いてくれたとこまでは良かったのだけれど。
ふと気がつくと、部屋のカドから青黒い煙がくすぶっているのが見えて、暁姉上が厳しい表情になる。
「お香じゃないし、なにか火元になるものあったかしら?」
「いあ、くとぅぐあ!」
あたしのマヌケなたわごとを遮るように、暁姉上が呟いた祝詞に応えて、漏斗がどこからともなく飛んできて、青黒い煙目掛けて、熱線といいますか、謎ビームを放つと、身の毛もよだつ悲鳴が聞こえて、あたしも真顔になり立ち上がる。
なんか、バケモノがいる!
でも、はっきりとは、姿が見えない!
踏み出した右足から、神紋が床へ広がり、【月光の聖域】を展開すると、待ち構えていたかのように、四方八方から、姿の見えないバケモノたちが飛びかかってくる!
襲いかかるなにかの姿は見えないけれど、その突撃は、【月光の聖域】に阻まれて、火花と唸り声がほとばしる。
「見える、わたしには、敵の動きが見える!」
暁姉上には見えているらしく、漏斗はジグサグに宙を舞いながら、謎ビームを放つと、バケモノには命中しているらしく、キモい悲鳴が聞こえてくる。
謎ビームは決定打にはなっていないようなので、あたしも釣り竿を手繰り寄せ、悲鳴が聞こえてくる場所目掛けて、槍のように突き出すと、何匹かのバケモノを突き殺した手応えがあった。
「朔! 朝陽さまと、陽月さまを!」
近侍たるあたしたちの部屋は、お二人の部屋のすぐ近くにある。
なのに、騒ぎにもならず、お二人の声も聞こえないのはおかしい!
【月光の翼】を展開し、敵中を突破しよう、と調息したところで、唐突に直上に気配を感じて仰ぎ見ると!
見慣れた衣装に身を包んだ、少年少女たちが落ちてきた!
聖凰学院の制服!
顔見知りだけでなく、あたし本人にしか見えない女の子もいるんですけど!
「朔! ぼんやりしてないで! はやく、怪我の手当を!」
この子たちもバケモノに襲われたのか、全身が噛み傷だらけ、ひどい火傷も!
後手後手に回っている自分の不甲斐なさに歯噛みしながら、【月光の癒し手】を発動し、満身創痍で意識を失っている中学生の治療を開始する。
うわあ……。
六人とも、ひどい怪我だけど、前世のあたしは、これ、本当に生きてるのかしら?
原型をとどめてる部位が、顔だけ。
返り血を浴びたのか、全身真っ赤っ赤で、酸でも浴びたかのように溶けてるし。
前世の自分自身と、先輩後輩を見捨てるわけにもいかず、【月光の癒し手】に神通力を注力しつつ、暁姉上の攻撃で動きを止めたバケモノにとどめを刺していると、荒々しかった怪我人たちの呼吸が落ち着いてきて、真っ先に目を覚ましたのは、前世のあたしだった。
あたしと目があった途端に、バッタのように跳ね起きて、ほとんど全裸に近い姿で、懐剣を構えて濃口を切る。
「あんた、誰? 仲間をどうする気なのよ?」
身長差から、前世のあたしに見下されてるわけだけど、異常な圧力を感じる。
眼光の鋭さが、ハンパない。
前世のあたしって、こんなに強そうだったかしら?
たいへんお待たせいたしました。
ならし運転中のため、短めです。
次回予告、『決戦! 風雲! 赤城城!』




