第四十四話 決戦! 風雲! 赤城城! その壱
前世のあたしの眼光にさらされるだけで、背筋が粟立つ。
気のせいか、少しずつ、眼の前のあたしの姿が大きく見えるように。
「きゃー! この娘、髪の毛ピンク色で可愛い~! むぎゅむぎゅ!」
地に足がつかない不安を感じる。
まるで、身体を締め付けられるような拘束感。
「むぎゅー! スリスリ~!」
場違い感たっぷりの、妙に甘ったるい声が、耳元から聞こえてくるような?
なんだろう、この感覚……。
懐かしくも儚いような、甘酸っぱい体臭?
あれ?
「リズちゃん、何をしてるの?」
いつの間にか、ジト目になった、前世のあたしが呆れたように声をかけ。
今のあたしは、背後から誰かに抱きかかえられているのに気づいた!
まさかっ!?
あたしの背後を、こうもあっさり取れてしまう人間など、今生でも、前世でも、数えるほどしかいないのに!
背後の誰かは、あたしをそっと床におろしてから、前世のあたしの視線を遮るように、今のあたしの前で、懐かしい決めポーズ。
「蛇遣座の星装者エリザベス、華麗に見参!」
クスシヘビのクッシーが巻き付いた、アスクレピオスの杖。
柔らかくウェーブしたショートボブの頭頂部には、アラベスク模様に覆われた銀色のティアラ。
黄金に輝く蛇遣座の星装。
これが、前世のあたしにとって最大の強敵にして、最強の魔法少女だった、大鳳エリザベス!
「説明になってないでしょ! いまさら、あたしに名乗ってどうするのよ!」
前世のあたしからの怒声を気にかける様子を見せずに、リズちゃんは屈んで、今のあたしに視線の高さを合わせてくれる。
「いやあ~。キミの魔導書が、マテリアルをわけてくれたおかげで助かったよ。ボクのことはリズって呼んでね! キミのことはなんて呼べば良いのかな?」
このマイペースっぷり、今のあたしにはすごく懐かしい!
マテリアルってのは、わからないけれど、ルル皇太女が何かしたのかもしれない。
あとで、夢の中で尋ねよう。
表情筋から緊張が抜け、自然に笑顔になるのを自覚しながら、居住まいを正して。
「あたしは、赤城国、天城領城代、天城青嵐の孫娘、天城朔です。突然現れて、傷ついたあなた達の治療をしていたところです。それと……」
「うんうん。ティンダロスの猟犬から守ってくれてたようだね。ありがとーサクちゃん。じゃ、ボクも加勢するね!」
リズちゃんの杖の先端が、シアン・マゼンタ・イエローの三色に明滅を始め。
「凍えるぞ、クール! 萌え尽きるほどキュート! 刻むぞ、星辰のパッション!」
リズちゃんが呪文とともに、杖を大きく振りかぶって。
「減法混色の星光拡散砲撃!!)
光った!
と認識した瞬間に、忌まわしい気配がすべて消えてしまったのがわかった。
すごい。
強い!
リズちゃんが味方でよかった!
こつこつと、漏斗ビームで魔物を灼いていた暁姉上は、珍しくポカ~ンしてて微笑ましい。
「天城朔ちゃんと、お連れさんには何かやることがあるんじゃないかな? ここはボクに任せて、先に行きなよ!」
「あ、ありがとうございます。わたしは朔の姉、天城暁です。お礼は幾重にも」
「お礼は良いから良いから。急がないとダメなんじゃないかなあ~って予感がするよ」
城内でこんなドンパチやらかしてるのに、城内の家臣や御殿女中が誰も出てこないのは、おかしい!
まずは、朝陽さまと、陽月さまの安否を確認しないと!
なにやら不満げな前世のあたしの相手は、リズちゃんに任せて、暁姉上にアイコンタクトすると、一緒に部屋の外へと駆け出した。
短めですが、なんとか年内に更新しました。
続きは三が日になんとかしたいなあ。
みなさま、良いお年をお迎えください。




