第四話:血の中の聖杯
#犬神家の崩壊 #狂愛の神経結合 #アンウィーヴィング #ダークロマンス #サイコスリラー #近親相姦 #胸糞展開注意 #純愛と狂気 #グロ注意 #救いなどない
(POV:犬神 寛二郎)
屋敷の静寂を切り裂く悲鳴が鉄パイプを伝い、地下実験室まで響いてくる。
それは私にとって、計画が極めて順調に推移していることを示す至高の旋律だった。私は高級ブランデーを僅かに口に含み、厳かに並び立つガラス筒の中の『検体』たちを冷ややかに眺めた。
これこそが、支配の本質だ。金や名声などという俗なものではない。他者の運命をこの指先一つで自在に操作できるという、神のごとき万能感。
モニターには、江戸と朱里の姿が映し出されている。私の最高傑作であるあの兄妹は、今まさに「教育」の最終段階へと足を踏み入れていた。
「素晴らしい」
私は、満足感に浸りながら独り言を漏らした。
彼らの冷徹さは偶然の産物ではない。それは私が長年かけて設計し、磨き上げた『犬神プロジェクト』の結晶そのものだ。幼少期から施した精神的・肉体的な調整によって、彼らから不要な感情を一切排除し、一族の「駒」としての完成度を極限まで高めたのだ。
彼らの異様なほど強固な精神的結束。それこそが、我が一族を不滅にする。外界の生温かい倫理など通用しない二人の絆は、決して破られることのない閉鎖回路なのだ。
私は中央の作業台へと歩み寄った。そこには、『織り手』と名付けた試作装置が鎮座している。複数の被験者の知覚をリンクさせ、人為的な共感覚を引き起こすための精密な医療機械だ。
――ガチャリ。
実験室の重厚な扉が開き、濃厚な血の匂いを纏った二人が入ってきた。
「父様」江戸が冷ややかに一礼する。「準備は整いました。あの娘の精神はすでに限界です。今こそ『織り手』による同調を開始すべきかと」
朱里は虚ろな瞳で私を見つめ、静かに、しかし熱を帯びた声で告げた。
「お父様、彼女の恐怖を私のものにしたい。一族の糧となる者の最期を、この身体に直接刻みつけたいの」
私は満足げに口角を上げた。「よかろう。神経同調の手順を開始する。朱里、お前の意識に彼女の感覚を直接接続させる。だが注意しろ。対象の精神が完全に崩壊すれば、お前の精神にも相応のフィードバックが走る」
江戸は朱里の細い肩を強く抱き寄せた。「私が支えます。彼女の意識が闇に呑まれ、壊れてしまわぬよう、私が繋ぎ止めてみせます」
私は装置の起動スイッチを押した。青いネオンが妖しく明滅し、鋭利な針の群れが不気味に脈動を始める。
「江戸、朱里を導け」私は命じた。「今夜、犬神の血は真の覚醒を果たすのだ」
作業台には、力なく横たわる詩織が静かに運び込まれた。彼女の絶望に満ちた涙目の視線が、冷たい機械の刃へと向けられる。
「真の儀式へようこそ、詩織ちゃん」私はマスクの奥で残酷に囁いた。「お前は、我が子たちが新たな次元へと昇華するための、尊き礎となるのだ」




