第十話:月下の舞踏会
#犬神家の崩壊 #狂愛の神経結合 #アンウィーヴィング #ダークロマンス #サイコスリラー #近親相姦 #胸糞展開注意 #純愛と狂気 #グロ注意 #救いなどない
(POV:犬神 静香)
私は常に、洗練された「美学」を持つ者を重んじてきた。
今夜、地下実験室の青白い光の下に集う客人(素材)たちの佇まいは、まるで絹のように滑らかで、静かなる死の威厳に満ちている。
「江戸、あちらの『お客様』に、冷たい洗浄液をお持ちして」
私は慈愛に満ちた母親の声で、白衣の息子に告げた。
端正な容姿に血飛沫を浴びた江戸が、静かに会釈して動き出す。朱里はその隣で、切断された神経の糸を真珠の首飾りのように指先で弄びながら、新しく奏でられる絶叫の楽譜について嬉しそうに語り合っていた。二人の並び立つ姿は、まさに血の海に咲く双輪の毒花のよう。
「お母様、この滑らかな皮膚の装丁は、私の新しい日記帳にふさわしいかしら?」
朱里が、実験台の上の上塚詩織を愛おしげに見つめ、瞳を輝かせて尋ねる。
「ええ、とても素敵よ、朱里。あの娘の若さならではの、繊細な光沢ね。剥ぎ取るのが今から楽しみだわ」
私は優雅に扇子を広げ、草薙刑事の苦悶に歪む顔を隠しながら答えた。
――衣擦れの音……肉を裂く音……談笑の声。
会場である地下室に流れる空気は、私たちにとっては穏やかで気品に満ちている。外界の退屈な法や倫理など、この聖域には届かない。私たちはただ、この美しい夜の静寂を愛し、一族の秘密を守り抜く。
江戸は外科用器具が並ぶ銀のトレイを手に、二つの実験台の間を優雅に縫うように進む。その所作の一つ一つに、犬神家の伝統と捕食者としての誇りが宿っていた。
「見てごらん、朱里」江戸が落ち着いた声で妹に語りかける。
「『織り手』を通じて二人の絶望が完全に調和している。これこそが、僕たちの求める美の極致だよ」
私は、クリスタルグラスに注がれた深紅の液体――先ほど抽出したばかりの、まだ温かい上質な血液を一口含んだ。冷たく、芳醇な鉄の香りが広がる。それは、どの季節の果実よりも「生と死」を象徴する鮮やかな味わい。
「江戸、朱里、明日の松濤での晩餐会の準備も手伝ってちょうだいね」
私は妖しく微笑んで言った。「最高のおもてなし(次の生贄)で、新しい客人たちを迎えたいの」
あの夜、犬神の邸宅の奥底で、私たちはただ無為に時間を過ごしていたのではない。
私たちは獲物の叫びという一瞬一瞬を慈しみ、明日という新しい惨劇の舞台を飾るための、かけがえのない血の思い出を紡いでいたのだ。




