後編
だが、せめてもの救いは、お金は返してもらえたことだ。
といっても、彼らに直接貸していたわけではなかったので、渡したものをそのまま返してもらったというわけではない。
ディーバットの両親は、そのためにまた借金をし、それで何とか返済したようだった。
その後夫婦仲は最悪になり離婚したそうだが……そんなことはどうでもいいことだ。
また、ディーバットは両親から勘当を言い渡され、家から追い出されたよう。
その後彼がどこへ行ったのかは誰も知らない。
ただ、ある人が言っていた話によれば、路上で物乞いのようなことをするディーバットらしき人を目撃したらしい。
ということは恐らくどうにかして生きてはいったのだろうが。
けれども、豊かな世界で穏やかに幸せに暮らしていったわけではない、ということは、確かなことだ。
◆
あれから数年。
驚いたことに私は今王子の妻となっている。
二年半ほど前、この国に危機が訪れたことがあった。魔物が大量発生し、それらに一般人が襲われるという事件が多発したのだ。軍は魔物を殲滅しようと懸命に戦っていたが作戦は順調ではなく。死者が出ることも少なくはなかった。
そんな時、闇魔法が役に立つことが判明したのだ。
闇魔法を使う者に遭遇すると魔物は大人しくなった。
どうやら味方だと認識するようで。
周辺で闇魔法が使われている時、魔物たちは、攻撃性を失い落ち着いた様子を見せるのだ。
その隙に攻撃すればあっさりと倒せる。
……といった事情があって、私の闇魔法が役に立つ時がついにやって来たのだった。
そして、そんな感じで働いていたところ、国王に感謝され、その息子である王子と結婚する流れになっていった。
こんなことになるなんて少し前までは欠片ほども思っていなかった。けれども運命は私をここへ連れてきた。そうして、それらの一連の出来事は、私を幸せへと導いてくれた。
「見て! 偉大なる聖女様よ!」
「うわぁ、憧れるなぁ」
「睫毛長ぁい。素敵ねぇ。同性も惚れちゃいそぉう」
闇魔法を使えるせいで虐められてきた私が聖女なんて呼ばれるようになるなんて、夢みたいな嘘みたいな話だ。
だが現実であることは確かなこと。
今もまだ若干ついていけていないけれど。
それでも少しずつは馴染んできて。
以前よりかは聖女と呼ばれても恥ずかしくはなくなってきた。
「あの方よ、聖女様」
「そうなのですね……! 確か、闇魔法で世界を救うっていう、偉大なる女性ですよね」
「そうそう! その人! しかもさ、とーっても魅力的なんだ」
「お美しい方よね~」
「心の綺麗さが滲み出ているのね、きっと」
たまに褒められ過ぎてしまうと顔が赤くなってしまいそうな時もあるけれど。
「あの方が未来の王妃様だなんて素敵よね」
「本当ですね……! そう思います」
「そうそう! 女王様になってほしいくらい! すーっごく魅力的だよね」
「お美しい方だわね~」
「恐らく心の綺麗さが滲み出ているのだと思うわ、きっとそうよ」
闇魔法なんて使えても……、と思って生きてきたけれど、最後に私を救ってくれたのはそれだった。
「ロセリア様、大好き~」
「同じく!」
「同感でっする!」
「ほんとそうよねぇ」
人のために。
世のために。
この力を活かせる時が来るなんて思わなかった。
けれどもそれはとても素敵なこと。
だから、誰かのためになるのなら、私はこれからも闇魔法を使っていくつもりでいる。
もう何も恐れない。
もう何にも怯えない。
ただ、真っ直ぐに、自分が信じる道を突き進む。
傷つけられてきた分だけ優しくなろう。
そんな風に思いながら。
可能な限り、希望ある未来を見つめていきたい。
◆終わり◆




