前編
使える魔法が闇魔法だったせいでずっと虐められてきた。
悪いことに使ったことなんてないのに。
誰もが私を悪女扱いする。
もう、とにかく、理不尽なことばかりの人生だった――そしてそれは婚約にも影響を及ぼした。
「ロセリア・アルフォン! 貴様との婚約、本日をもって破棄とする!」
婚約者だったそこそこ良い家柄の青年ディーバットは、あるお茶会の最中にそんな宣言をしてきた。
「闇魔法を使うような悪女と結婚するなどやはり嫌だ! 貴様の親にはうちの親の借金の肩代わりをしてもらったので今日までは仕方なく付き合ってやっていたが……もうおしまいにする! ロセリア、貴様とはここまでだ!」
――そう、彼が言っている通り、私の両親は彼の両親に支援のお金を出していた。
だがそれは私たちが結婚することが条件だった。
なのに彼は婚約を破棄すると言う。
もし本当に婚約破棄となれば、これまでの話すべての根っことなる部分が壊れることとなり、支援打ち切りなんてものでは済まないだろう。
彼の両親は私の両親へ支援してもらった分のお金を返さなくてはならなくなる……借金を作るような人たちにそんなことができるのだろうか?
「本気で言っているのですか?」
「ああ!」
「そうなれば既に出した支援金も回収することになりますけど……」
「は? なんだそれは! 馬鹿か! そちらが出した分は今さら返すなどといったことはない!」
調子に乗ったような表情を浮かべているディーバットだったが。
「ですが、婚約の際に作った書類にそういった内容を記載しています」
そう言ってやれば。
「は、はぁ……?」
急に不安げな面持ちになる。
「そんなこと……ああ、そうか、分かった。脅しだろう? 婚約破棄されたくなくてそんなことを言っているのだろう? ばればれだ」
何とか強気でいようとするディーバットだが。
「ディーバットさんもサインなさいましたよね」
「ああしたさ! だが! そんなことは書いていなかった!」
「いえ、書いていました。あの時確認しましたから。ディーバットさんがきちんと読んでいなかっただけではないですか」
そこまで言われればさすがに嫌な予感がしてきたようで。
「な……ば、馬鹿な、ことをっ……」
急に声が震え始めた。
「それでも婚約破棄なさるのですね?」
「ぐっ……そ、そうだ! 決めたのだから! 悪女には屈さない!」
それでも何とか強気を取り戻し言い放つディーバットだったが。
「分かりました、では、これまでですね」
それは破滅への道だ。
我が家の力、支援がなくなれば、ディーバットもその家も駄目になってしまうだろう。
ただ、彼の決定によってどんな目に遭うこととなったとしても、それは自業自得でしかない。こちら側が切り捨てたわけではないのだから。向こうが自ら破滅へと向かうのであれば、それを止める理由は特にはない。
こうして婚約は破棄となった。
その後正式に話し合いの場が設けられ、お互いの両親も参加し、いろんな面から話し合いが行われた。
そしてその結果やはり我が家がこれまで支援した分のお金は返してもらうことに決まった。
見栄のために無駄遣いをしてばかりだったディーバットの母親は、まるで被害者であるかのように泣いていた。
家の力を大きく見せるために借金を重ねてきたディーバットの父親は、終始私を睨みつけてきていた。
何だったんだ、あの夫婦は……。
親が悪いから子も悪い、なんて、決めつけて言いたくはないけれど。
ただ、今回に関しては、そう思ってしまう部分がまったくないわけではなかった。
ディーバットの両親の振る舞いを見ていれば、この親があってのこの息子なのだな、と思ってしまう部分は確かにあった。
……当然、すべての人に対してそういうことを言うつもりはない。




