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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第四章:ルミナ「死なない戦場」

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第九十話:神視点(ゴッドビュー)の支配

第九十話:神視点ゴッドビューの支配


南部戦線の防衛陣地は、もはや「戦場」ではなく、ルミナという一人の少女によって統御された「精密機械の内部」へと変貌していた。


「……右翼第三小隊、損耗率四〇パーセント。問題ないわ、許容範囲よ」


ルミナの脳内では、数千のウィンドウが高速で明滅し続けている。

魔族の波状攻撃は激しさを増し、本来ならば数分で全滅していてもおかしくない火力が兵士たちを襲う。しかし、ルミナの魔法糸が繋がっている限り、そこには「死」という概念が存在し得なかった。


「あ……がっ……!」


最前線の兵士の腹部を、魔族の投槍が貫く。内臓が零れ落ち、命の灯火が『Red』を越えて『Black』に染まろうとした瞬間――ルミナの指が、虚空を鋭く弾いた。


再生リワインド――最適解を抽出。復元しなさい」


糸を通じて、高濃度の治癒エネルギーと強化ポーションが爆発的に流し込まれる。

飛散した肉が重力を無視して集まり、裂けた皮膚が火花を散らして縫い合わされる。数秒前まで死体同然だった兵士が、まるで「時間の巻き戻し」を見ているかのような異様な光景を伴って、咆哮と共に立ち上がった。


「信じられん……まただ。また身体が勝手に治っていく!」

「ルミナ様が、ルミナ様が俺たちを視ていてくれる! ならば、死ぬことなどありえん!」


兵士たちの間に、狂信に近い無敵感が蔓延していく。

傷つくこと、部位を欠損することさえも、彼らにとっては「ルミナへのリソース要請」という一つの戦術に過ぎない。痛みを忘れた軍勢が、死を恐れぬゾンビのような突撃で、逆に魔族の軍勢を押し戻し始めていた。


ルミナの「生存の支配」は完璧だった。

サキモリに叩き込まれた効率化の極致。一人の死者も出さず、最小のコストで戦線を維持し、敵を疲弊させる。彼女はその圧倒的なマルチタスク処理の渦中で、自分が戦場の神になったかのような全能感すら抱き始めていた。


「ふん。数に頼っただけの低能な魔族ども。私の管理から漏れる命なんて、一つもありはしな――」


自慢げに唇を歪めた、その時だった。


突如、ルミナの視界を埋め尽くしていた美しい幾何学模様のUIが、激しく明滅フラッシュした。


『WARNING - CRITICAL ERROR』

『Undefined High-Energy Entity Approaching』

『未定義の超高質量魔法反応・接近』


「……えっ?」


ルミナの思考が、一瞬だけ硬直する。

頭上の空から、物理的に大気を押し潰し、空間そのものを歪ませるような「魔法の質量」が降り注いできた。

それは、ルミナがこれまで処理してきたどの魔族とも、どの術式とも次元の違う「何か」。


脳内のシステムが処理能力を超え、耳を劈くようなアラート音が響き渡る。

ルミナが顔を上げた先、雲を割って現れたのは、世界の法則そのものを書き換えてしまうような、美しくも残酷な「龍の影」であった。


(第九十話:完)

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