表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第三章:アリサ「鉄壁の軍団」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
87/137

第八十八話:鉄壁の消滅

第八十八話:鉄壁の消滅


その音は、世界の終わりを告げる弔鐘のように響いた。


「魂のアイギス」の中央に深く突き刺さった、牛王の巨大な戦斧。先代牛王の角から削り出されたその破壊の権化は、アリサの命を代償にした防壁を、内側から冷酷に食い破っていく。


「あ……が、は……ッ!!」


アリサの口から、どす黒い血が溢れ出した。

盾の貫通――それは彼女の精神と魔力回路が直接、物理的に引き裂かれたことを意味する。魂の盾を起点として、周囲の聖騎士たちに展開されていた「アイギスの加護」が、過負荷によって連鎖的に発火、粉砕されていく。


パリン、パリンッ、パリン――!!


戦場を覆っていた白銀の幾何学模様が、ガラスの雨となって降り注ぐ。

数秒前まで「無敵の軍団」であった六百人の兵士たちは、今や防具を剥ぎ取られた赤子のように、十万の飢えた魔族の前に晒された。


「……終わった……のか?」


誰かが絶望に満ちた声を漏らす。

直後、戦場を支配したのは、あまりにも残酷な「静寂」だった。


盾が砕け散り、兵士たちの戦意が凍りつく。その静寂を、アリサの膝が崩れ、甲冑が地面を叩く鈍い音だけが乱した。


アリサの意識は、既に肉体を離れ、深い闇の底へと沈んでいた。

だが、その真っ暗な意識の淵で、彼女は「視た」。


(……サキモリ……様……?)


それは幻覚か、あるいは死の間際に見せた念波の悪戯か。

遥か遠く、数百キロの距離を越えたバルバロイの地。

自分にとっての神であり、絶対の正解であったはずの「管理者」が、自分と同じように膝をつき、数多の傷を負って敗北の影に飲み込まれようとしている姿が、ノイズまみれの魔法通信のように脳裏をよぎる。


無敵だと思っていた。

彼についていけば、いつまでも平和な日常を守れるのだと信じていた。


だが今、二人が築き上げた設計図は、東西の地で同時に、無残にも瓦解しようとしている。


「……ぁ……」


アリサの手から、もはや力の入らない指が離れ、愛用の盾がカランと音を立てて転がる。


彼女の背後で、十万の軍勢が勝利を確信した獣の咆哮を上げ、一斉に雪崩れ込んできた。


「サキモリ……様……」


血に濡れた唇から漏れたのは、祈りのような、あるいは悔恨のような呟き。

ガーランド帝国の象徴たる「白銀の門」が、真っ黒な魔族の波に飲み込まれ、亀裂が入り崩壊を開始した。


(第八十八話:完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ