表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第三章:アリサ「鉄壁の軍団」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/138

第八十六話:黒い牛王と「魔法破壊」の角

第八十六話:黒い牛王と「魔法破壊」の角


空気が、死を孕んだ重圧に塗り替えられた。

正規兵の波が完全に左右へ割れ、戦場の中央に広大な「空白」が生まれる。そこから現れたのは、これまでの牛魔族さえも矮小に見せる、古代の絶望そのものだった。


「――古代種、牛王ミノタウロス・ロード


アリサの喉が、恐怖で引き攣る。

漆黒の体躯は四メートルを超え、その手には巨大な戦斧。そして何より、頭上にそびえ立つ二本の角。それはもはや生物の器官ではなく、あらゆる理を拒絶し、粉砕するために造られた「暴力の結晶」だった。


牛王が低く咆哮を上げる。それを合図に、控えていた千体の牛魔族が一斉に角を突き立て、地を蹴った。


「総員、最大警戒! 盾を重ねなさい!」


アリサは残された魔力のすべてを絞り出し、六百人の兵士を覆うほどの巨大な多層アイギスを展開する。サキモリの理論に基づき、最も頑丈で、最も効率的な幾何学構造。これまでの正規兵なら、万単位の攻撃でも防ぎきるはずの「絶対の壁」だ。


だが。


ドォォォォォォン!!


先頭の牛魔族の角がアイギスに「触れた」瞬間、アリサの計算は物理的に破綻した。

受け流すことも、分散させることもできない。彼らの角に宿るのは、万物をただその「硬度」と「力」のみでねじ伏せる、純粋な破壊の意志。


パリンッ!

――パリン、パリン、パリンッ!!


「……っ!? な、に……これ……」


アリサがどれほど重心を低く保ち、衝撃の軌道を制御しても、角がかすめた場所からアイギスが薄氷のように砕け散っていく。魔法的な剛性など、彼らの圧倒的な物理攻撃力の前では、存在しないも同義だった。理論も、技術も、合理も。牛王たちが一歩踏み込むたびに、アリサが築き上げた設計図が文字通り「物理的に」叩き壊されていく。


「ああああああッ!!」


アイギスが砕けるたびに、魔力回路を通じてアリサの精神に猛烈な衝撃が逆流する。

サキモリに教わった「構造の美しさ」が、ただの力任せな暴力によって蹂躙される。その屈辱と苦痛が、彼女の脳を内側から焼き焦がした。


「団長! 盾が……盾がもう持ちません!!」


叫ぶ兵士たちの目の前で、アリサが激しく身悶えし、口から鮮血をぶちまけた。

内臓を直接握り潰されたような激痛。それと同時に、彼女の脳裏に展開されていた戦場の精密なシミュレーション――「設計図」が、荒い砂嵐のようなノイズに飲み込まれていく。


敵の数、位置、衝撃の予測。

それらすべてを司っていた「管理者の視界」が、プツリと断絶した。


「……ぁ……あ……」


膝をつき、血を吐き出すアリサの視界の中で、最後の一枚となったアイギスが、牛王の振り下ろす戦斧の影に飲み込まれていく。

背後の兵士たちの絶望的な叫びも、もはや彼女の耳には届かないほど、遠くなっていた。


(第八十六話:完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ