表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第三章:アリサ「鉄壁の軍団」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/133

第八十三話:不落のハニカム・ゲート

第八十三話:不落のハニカム・ゲート


ガーランド帝国の最東端、峻険な岩山に挟まれた「白銀の門」。

かつて難攻不落と謳われたその地平を、今、十万の絶望が埋め尽くしていた。


「……報告。敵軍、およそ十万。先鋒は魔族正規重装歩兵。あと五分で接敵します」


聖騎士の一人が、乾いた声で告げる。対する守備隊は、アリサ率いる聖騎士団百名と、徴募された一般兵五百名。合計、わずか六百。

一人が百六十六人を相手にする計算。それはもはや戦いではなく、屠殺を待つだけの光景にしか見えなかった。


だが、最前列に立つアリサの瞳に、怯えの色はない。

彼女の脳裏には、サキモリが淡々と語った「防衛の構造」が、鮮明な図形となって浮かんでいた。


「――全軍、盾を構えなさい。ただし、真っ向から受けてはダメ。わずかに左へ、十度の傾斜を」


アリサの声が響くと同時に、彼女の手から白光が溢れ出した。

それは巨大な壁を作るのではなく、無数の、そして極小の「破片」へと分かたれる。概念盾「アイギス」。その欠片が、六百人の兵士が構える盾の数センチ前方へ、蜂のハニカムのような規則性を持って浮遊し、固定された。


「来るぞッ! 衝撃に備えろ!」


地響きと共に、魔族の第一波が激突した。

身の丈3メートルほどもある巨体の魔族が、その膂力に任せて巨大な盾と剣を叩きつける。本来ならば、人間など盾ごと肉片に変わるはずの一撃。


だが、奇跡が起きた。


「……滑る? 攻撃が、滑っていくぞ!」


兵士たちが驚愕の声を上げる。

魔族の剣がアイギスの欠片に触れた瞬間、サキモリ直伝の「ベクトル誘導」が発動した。十度の傾斜をつけられた「見えない盾」は、正面からの圧力を逃がし、敵の武器を強制的に横へと逸らしていく。


キィィィィン! と鋭い金属音が鳴り響くたび、魔族たちは自分の突進力に振り回され、面白いように体勢を崩して転倒していった。


「焦らないで。盾の耐久値は私が管理します。貴方たちは、転んだ敵を確実に仕留めることだけに集中しなさい」


アリサの管制は完璧だった。

戦場全体を俯瞰し、衝撃が集中する箇所の「角度」を瞬時に微調整する。魔力を壁として張るのではなく、敵の力を利用して敵を倒す。最小の魔力で最大の防衛を成すその「仕組み」は、十万の軍勢を前にして、一人の戦死者も出さないという不可能な数式を成立させていた。


「これなら……これなら勝てるぞ! 聖騎士団長についていけば、俺たちは死なない!」


一時間後。

門の前には数千の魔族の骸が積み上がり、人間側の被害は皆無。

絶望的な数差を「理屈」でひっくり返した快感に、兵士たちは熱狂し、勝利を確信した。


だが。


その歓喜を切り裂くように、地平線の彼方から、先ほどまでの足音とは明らかに質の違う「地鳴り」が響き始めた。

大気を震わせ、内臓を揺さぶるような、不気味な重低音。


アリサの顔から、さっと血の気が引いていく。

彼女の鍛え抜かれた視力が捉えたのは、さらに勢いを増し勢力を増やした正規兵の本隊が、悠然と歩を進めてくる一団だった。


「……ここまでの物量は初めてだな……」


アリサの呟きは、兵士たちの勝ち鬨にかき消された。

その「地鳴り」が近づくにつれ、不落を誇ったハニカム・ゲートが、物理的な振動だけで、悲鳴のような軋みを上げ始めていた。


(第八十三話:完)

本日もお読みいただきありがとうございました。


11話連続更新となりましたが、少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


『勇者召喚、ヤバいのが混じってた。』を応援していただける方は、ブックマークや評価をいただけると今後の執筆の大きな励みになります。


引き続き毎日更新を続けていきますので、よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ