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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第三章:エレン「視界なき殲滅」

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第七十七話:弾幕設計図(バレット・ロジック)

第七十七話:弾幕設計図バレット・ロジック


クレイオス公国、時計塔の最上階。

空になった矢筒を捨てたエレンの前に、絶望という名の波が押し寄せていた。


「矢が切れたぞ! 伏兵を叩き出せ!」

「塔ごと崩せ! 狙撃手さえ仕留めれば我らの勝ちだ!」


魔族たちの咆哮が、石造りの塔を激しく震わせる。弓兵にとって、矢を失うことは「死」と同義だ。だが、エレンは静かに目を閉じる。


脳裏に蘇るのは、かつてこの国を奪還した際、サキモリが自分にだけ語ってくれた穏やかで、しかし冷徹な「講義」の記憶だ。


『エレン、弓は「点」で敵を穿つものだと思ってはいけないんですよ。それは、あまりに非効率ですから』


サキモリは、何もない空間に指で数本の直線を引いた。


『敵を狙うのではなく、戦場という空間そのものを「設計」するんです。いいですか、弾幕とは単なる数ではありません。敵の回避先をあらかじめ潰し、存在することを許さない空間を作る「面」による構造制御なのです。少ない弾数でも、タイミングさえ最適化すれば「壁」は作れます』


当時のエレンには、その言葉の真意が完全には理解できていなかった。だが、物理的な矢が尽き、精神が研ぎ澄まされた今、彼女にはその「設計図」が視える。


「……構造、構築を開始します」


エレンが弓を水平に構え、弦を引く。そこには矢はない。

代わりに、彼女の指先から溢れ出した魔力が、空中に十数個の小さな「幾何学的な紋様」を描き出した。


(一度に放てるのは十数発。ですが、それで十分です)


エレンは魔法陣に、周囲の大気から魔素を吸い上げる「変換回路」を組み込む。自身の魔力は最小限の「種火」として使い、外気を取り込んで矢を形成する。サキモリが教えてくれた、内燃機関の吸気ロジックを魔術的に翻訳した、極めて効率的な弾薬生成システムだ。


「あ、あれを見ろ……! 光の矢が浮いているぞ!」


塔を登り始めた魔族たちが、頭上の異変に気づく。

エレンの周囲に展開された十数個の魔法陣。それらは単に浮いているのではない。エレンの視界の中でグリッド分けされた戦場の「座標」と、完璧に同期していた。


「戦場の一部を……設計図キャンバスとして定義します」


エレンの瞳が、青く冷徹な光を放つ。

彼女が弦を弾くたび、十数発の光の矢が放たれる。しかし、それはバラバラに飛ぶのではない。敵が右に避ければそこにある矢が、左に逃げれば別の矢が、まるで最初からそこに敵が来ることを知っていたかのように、逃げ道を塞ぎながら急所を穿つ。


「ぐあああ!? 避けたはずなのに矢が――」


一撃一殺の精度を保ったまま、間断なく降り注ぐ十数発の連射。

それはまさに、サキモリの言った「面」の支配だった。敵はどれほど俊敏に動こうとも、エレンが設計した「死の網目」から逃れることができない。


「私はサキモリ様の盾。……一歩も、私の設計したエリアからは出させません」


かつての「一発勝負の狙撃手」は消えた。

彼女は今、最小のコストで最大の戦果を叩き出す「効率的な制圧者」へと変貌したのだ。


(第七十七話:完)

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