表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第三幕・第二章:削り続ける地獄(サキモリ編)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/136

第七十五話:壁の出現「敗北の予兆」

第七十五話:壁の出現「敗北の予兆」


銀狼族の放つ圧力が、戦場の大気そのものを変質させていた。

サキモリの脳内カウントダウンは、無慈悲に「残り五〇分」を告げている。視界は鮮血の色に染まり、肺を焼く熱い呼気だけが、彼がまだ「生物」として機能していることを証明していた。


「――構造の、解体」


サキモリは、蓄積された疲労の全てを加速に変換し、地を蹴った。

狙うは、銀狼族の喉元。これまで数千の魔族を、まるで紙細工のように切り裂いてきた、一点の淀みもない最速の突きだ。


だが。


ガキンッ、と。

耳をつんざく金属音が響き、サキモリの腕に凄まじい衝撃が跳ね返った。

彼の放った『灰色の槍』の先は、銀狼族の喉元に届く前に、その黒鉄の槍の柄によって完璧に遮断されていた。


「……止まった?」


サキモリの瞳が、驚愕に揺れる。

それは単に防がれたのではない。銀狼族は、サキモリの攻撃の「構造」を完全に見切り、力のベクトルが最も脆弱になる瞬間に、その槍を置いたのだ。


「――っ!」


サキモリは即座に槍を引き戻し、二撃、三撃と追撃を繰り出す。

だが、そのすべてが黒鉄の壁に阻まれ、火花を散らす。

人類の限界を超えたスペックを持つ古代種。その個体性能を前に、サキモリの「効率」は初めて壁にぶち当たった。


(……致命的な計算ミスです。この個体は、今の私の出力では、殺しきれない)


サキモリの脳内で、冷徹な論理が結論を弾き出す。

今の彼は、穏やかな守り人としてのリミッターを外せていない。仲間の無事を祈り、自身の生存を優先し、一秒でも長くこの場を維持しようとする。その「守りの構造」が、攻撃の純度を決定的に下げていた。


ドォッ!

銀狼族の反撃。槍の石突きがサキモリの腹部を捉えた。

軍服が裂け、内臓を揺らす衝撃にサキモリは数十メートルも後方へと吹き飛ばされる。


「ゴホッ……、ガハッ……!」


血の池に沈みながら、サキモリはかろうじて槍を支えに上体を起こした。

膝が笑い、視界が二重にブレる。もはや、計算上の活動限界シャットダウンを待たずして、肉体が崩壊を始めていた。


銀狼族は追撃せず、ただ悠然とサキモリを見下ろし、深みのある声で嘲笑った。


「……脆いな、人間。貴様の槍には『理』はあるが、魂を焼くような殺意が欠落している。何を守ろうとしているかは知らぬが、その優しさが貴様の牙を鈍らせているのだ」


銀狼族の槍が、ゆっくりとサキモリの喉元に向けられる。

サキモリはその冷たい切っ先を見つめながら、不意に、この場にはいない仲間たちの姿を幻視した。


盾を砕かれ、絶望の中で押し潰されるアリサ。

矢が尽き、黒い魔族の物量に追い詰められるエレン。

魔力が枯渇し、血の混じった涙を流しながら笑うルミナ。


(……ああ。私の……失敗です)


サキモリの指先から、力が失われていく。

一対一〇万。古代種の蹂躙。そして、四国同時に進行する死の連鎖。

管理者のプライドが、そして「穏やかなサキモリ」としての限界が、今、完全に粉砕されようとしていた。


(第七十五話:完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ