第五十九話:灰色の槍、限界を超えた過負荷
第五十九話:灰色の槍、限界を超えた過負荷
王都包囲網の最終防衛線。
魔族は重装甲のゴーレム部隊を投入し、物理的な質量で進路を封鎖しにかかった。
「……力押しは非効率。再度、『テトラ』を起動。移動しながらの荷電粒子照射で道を抉じ開けます」
サキモリの冷徹な号令。
だが、その中核となるべき『灰色の槍』は、これまでの不眠不休の酷使により、無機質な表面に無数のひび割れが走っていた。
本来の真の名の役割を無視し、単なる魔力の導管として使い潰され続けた神器の悲鳴。
「サキモリ殿、槍の構造が不安定だ! これ以上の高出力照射を行えば、槍そのものが砕けるぞ!」
アリサが盾を構えながら警告するが、サキモリは視線すら動かさない。
「……問題ありません。砕ける直前の一秒に最大出力を合わせ、破壊のエネルギーを推進力へ変換します」
サキモリは『灰色の槍』を前方に固定。
アリサの防御、ルミナの魔力、エレンの照準が槍の穂先で一点に収束する。
臨界。槍がミシミシと音を立てて砕け散る瞬間、青白い光の奔流が放たれた。
「――照射」
光の柱がゴーレムの群れを原子レベルで分解し、王都への直線を焼き払う。
衝撃で槍の半分が霧散した。
だが、サキモリはすぐさまインベントリから「回復薬の霧」を噴霧し、空いた手に抽出したばかりの魔力を流し込む。
「自己修復シーケンス、強制加速。……戻りますね」
一秒。
欠損した槍の身が、時間を巻き戻したかのように滑らかに再生する。
サキモリは鈍く輝く『灰色の槍』を無造作に握り直した。
「……まだ耐えられますね。次の防衛線へ向かいます」
神話の時代におそれられた呪われた強力で恐ろしい力を持つ神槍…だったはずの名を呼んでもらえない灰色の槍。
その力の断片でもある魔力による再生能力を、サキモリの手で修復と破壊をコンマ単位で管理される槍。
それを手に、サキモリは一切の躊躇なく加速した。




