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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二幕・第三章:補給線の革命「不沈の進軍」

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第五十六話:遭遇、魔族の斥候部隊

第五十六話:遭遇、魔族の斥候部隊


バルバロイ帝国へと続く街道。

かつてサキモリが「資源」を求めて蹂躙した地は、今や魔族の軍勢による組織的な侵攻にさらされていた。


しかし、国境のゲートを突破した「不沈の四角形」は、戦況の推移を正確に把握してはいない。

彼らの手元にあるのは、バルバロイの使者から届いた「至急謁見されたし」という一通の手紙のみである。


「……移動速度を維持します。魔族の散発的な反応がありますが、正面衝突によるタイムロスは最小限に抑えてください」


サキモリの指示は、戦場にあっても極めて平熱だ。

背負い椅子では、依然としてエレンが強制睡眠ポーションの残響の中で安らかに眠り、その上からルミナが目をこすりながら索敵魔法を展開している。


その時、街道の先で伏撃の機会を伺っていた魔族の斥候部隊が、異常な「光学現象」を捉えた。


「隊長! 街道を、光の塊が移動しています! この速度……空間転移の連続発動か!?」


斥候の報告に、魔族の指揮官は目を剥いた。


「馬鹿な。連続転移など、高位の宮廷魔導士でも数回が限界だぞ。増援か? 奴らの到着予定地点に先回りし、魔力残渣を辿れ!」


魔族たちは街道を先回りし、サキモリたちが通り過ぎたばかりの地点に飛び込んだ。

彼らが探したのは、空間を歪めた際に残る「次元の裂け目」や「濃密な魔力酔い」の跡だった。


だが、そこに残されていたのは、もっと恐ろしい「物理的な事実」であった。


「……魔力残渣が……ありません。ただの、深く力強い靴の跡だけです」


「なんだと? では、この移動速度は何だ。まさか、生身の足でこの距離を……?」


その時、街道の向こうから、アリサが展開する『アイギス』の光が迫ってきた。

魔族の斥候部隊が、反射的に武器を構える。


「止まれ! 何者だ! この先は我ら魔族の制圧圏内だぞ!」


サキモリは、速度を一切落とさずに返答した。

彼の両手は、今まさに空になったポーション瓶を、インベントリから取り出したゴミ袋に放り込んでいる最中だった。


「……失礼。バルバロイ帝国への謁見を急いでいます。通行の邪魔になるようでしたら、排除しますが」


「謁見だと? この深夜に、不眠不休で走り続けてきたというのか! 転移魔法も使わずに!」


サキモリは、不可解そうに小首をかしげた。


「……転移? いえ、ただ歩いて(・・・・・)いただけですが、何か。人間は歩けば進むように設計されています」


「『歩いただけ』で三日で三〇〇キロ移動できるか! 貴様ら、いつ寝ている!」


「……交代制です。仕組みさえ整えれば、歩行と睡眠、そして戦闘は並列処理が可能です」


サキモリが通り過ぎる際、ポーションの空き瓶がカチリと音を立てて袋の中で跳ねた。

アリサが盾で魔族を弾き飛ばし、ルミナが魔法で威嚇射撃を行い、エレンは眠ったまま運ばれていく。


その異様な集団は、驚愕する魔族たちを文字通り「置き去り」にして、闇の先へと消えていった。


残された魔族の斥候は、震える手で本陣へ通信を送った。


「……報告します。敵増援と思わしき集団と遭遇。しかし、奴らは魔法による移動テレポートを行っていません。……ただ、歩きながら寝て、食べながら戦っているだけです。……奴らは生物ではありません。止まることのない『進軍の機械』です!」


その報告は、魔族の司令部に、いかなる魔法よりも深い戦慄を撒き散らすこととなった。


一方、サキモリは地図に目を落とし、冷静に呟いた。


「……斥候の密度が上がっていますね。バルバロイの状況は、思ったより不透明なようです。……速度をあと五パーセント上げましょう」


不沈の軍団は、朝露に濡れた街道を、さらに加速して駆け抜けていった。


第五十六話:完

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