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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二幕・第三章:補給線の革命「不沈の進軍」

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第五十四話:アリサの矜持と「消耗品」の盾

第五十四話:アリサの矜持と「消耗品」の盾


街道を埋め尽くしていたのは、意思を持たぬ死者の奔流――『スケルトンウォーカー(骸骨放浪者)』の巨大な群れであった。

個々の戦闘力は低いが、破壊しても即座に再結合する不死の特性を持ち、それが数千単位で進路を塞いでいる。


「……迂回は一時間のロス。正面突破を選択します」


サキモリは速度を緩めることなく断じた。

背負い椅子では、魔力を使い果たしたルミナが泥のように眠っている。


エレンは弓を引き絞り、骸骨の群れに紛れる「再生能力を持たない異物」がいないか周囲を鋭く警戒していた。


「アリサ殿、概念盾『アイギス』を前方最大広角に展開してください。我々はそのまま突撃し、物理的な質量で群れを粉砕・排除します」


「了解した! ……だが、これほどの密度を相手に展開し続ければ、アイギスの負荷が保たんぞ!」


アリサが叫び、魔力で編み上げられた光の盾『アイギス』を前方に巨大なくさびとして顕現させた。


アリサが盾を構えたまま突進し、骸骨の群れと衝突する。

「ガシャァッ!」と、硬質な骨が砕け散る不快な音が連続して響く。


だが、不死の軍勢との衝突は、アイギスという概念にも物理的な磨耗を強いた。


「……くっ、アイギスに亀裂が……砕けるぞ!」


「問題ありません。再形成してください」


サキモリは、走りながら『灰色の槍』をアリサのアイギスへ接触させた。

槍を触媒とした魔力回路『テトラ』が再起動し、サキモリの手元から、道中に抽出・調合されたばかりの『中級回復薬』と魔力が、アリサの経路へと強引に流し込まれる。


「盾が砕けるより早く、私が貴殿の魔力と概念を再生させます。アリサ殿、止まらないでください。貴女は今、この軍団の『衝角ラム』です」


「……あ、ああ! 分かっている!」


アイギスが砕け散った刹那、サキモリから供給される過剰なまでの魔力が、コンマ数秒で新たな盾を再構築する。

砕け、再生し、また砕け、瞬時に形を成す。


盾が「壊れない」のではない。壊れるよりも早く、サキモリが「修復」し続けているのだ。


「……右翼より個体接近。排除します」


サキモリは盾から漏れ出し、横合いから縋り付こうとする骸骨たちを、片手で操る『灰色の槍』で精密に突き崩していく。

槍の穂先が砕けても、それは次の瞬間には滑らかに自己修復を終えている。


「ハァッ、ハァッ……! サキモリ殿、供給が多すぎる! 精神が……戦う意志が、この魔力供給の速度に追いつかん!」


アリサは悲鳴のような声を上げた。

身体はポーションとサキモリの魔力によって常に「新品」に保たれている。


筋肉の疲労も、魔力枯渇の倦怠感も、発生した瞬間に薬理的に消し飛ばされる。

だが、幾度も盾が砕かれ、衝撃を受けるという「精神的摩耗」だけは、サキモリの調合リストには入っていない。


「精神力は計算式に含んでいません。アリサ殿、あと三〇〇メートル。そのまま最大出力を維持してください」


「……狂っているな、貴殿は!」


光り輝くアイギスの楔が、骸骨の海を真っ二つに割り、ついには群れの終端を突き抜けた。

背後に残されたのは、再結合が追いつかずに散らばった無数の骨の破片だけだ。


サキモリは速度を一切落とさず、肩で息をするアリサの口に、仕上げの『中級回復薬』を流し込んだ。


「……目標突破。アリサ殿、心拍数を整えてください。次の警戒フェーズに移ります」


「……はぁ、はぁ。……信じられん。騎士としての誇りや精神力が、物理的な供給量に追い越される日が来るとはな。……サキモリ殿、貴殿にかかれば、心までもがただの『消耗品』扱いだ」


アリサは呆れ果てたように笑った。

彼女の身体は、今や一傷の痛みも残っていない。


だが、その瞳には、合理性という名の怪物に振り回された者特有の、深い疲労が滲んでいた。


「……効率的な運用を心がけているだけです」


不沈の管理者はそう言い捨てると、再び前方の闇を見据え、規則正しい足音を刻み続けた。


第五十四話:完

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