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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二幕・第三章:補給線の革命「不沈の進軍」

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第五十一話:不眠不休の行軍、開始

第五十一話:不眠不休の行軍、開始


『粘液の穴』で得た膨大な資源。それはサキモリという管理者の手によって、四人の肉体と精神を「二十四時間稼働の永久機関」へと作り変える燃料となった。

ダンジョンを後にした一行の前には、バルバロイ帝国の国境を越えるための広大な荒野が広がっている。


通常、重武装の騎士や魔導士を含むパーティがこの距離を移動するには、少なくとも一週間の強行軍と、それに見合う野営の休息が必要とされる。

だが、サキモリが提示した「進軍計画」に、休息の二文字は存在しなかった。


「……これより、移動しながらの『二十四時間交代制勤務』を正式に発令します。目標地点まで、我々は一度も足を止めません」


サキモリは、自ら考案し現地で組み上げた「多機能型背負い椅子」を背負いながら、淡々と告げた。

それは、人間一人を座らせたまま移動できる頑丈な背負子であり、同時に簡易的な仮眠ベッドとしても機能する。


「……おじさん、本気で言ってるの? 寝ながら移動するなんて、首が折れちゃうわよ」


ルミナが呆れたように言うが、サキモリの視線は既に「効率」の先にある。


「……ルミナ先生。貴女には移動中、私がスケッチしたこれらの薬草を魔法で操作し、走りながら精製・袋詰めを行っていただきます。アリサ殿とエレン殿は、前方および左右の警戒。……そして、最初の『休憩者』はルミナ先生、貴女です。椅子に座ってください」


「えっ、私から?」


「はい。貴女の魔力は我が軍団の精油所です。最も高いパフォーマンスを維持させねばなりません。……さあ」


有無を言わさぬサキモリの指示で、ルミナが背負い椅子に固定される。

サキモリは、成人女性一人の体重など存在しないかのように、一定の歩調で走り始めた。


ここからの光景は、およそ「冒険」とは程遠い、極めて効率的な工場のライン作業のようであった。


先頭を走るアリサが盾を構え、進路上の障害を弾き飛ばす。

右翼のエレンが、走りながら一キロ先の敵を狙撃して排除する。


そしてサキモリの背中で、半分寝ぼけたルミナが魔法の糸を操り、道端から採取された薬草を宙で分解し、精製された粉末を次々と袋に詰めていく。


「……ふぁあ。……おじさん、意外と揺れないわね、これ」


「……姿勢制御に必要な分の筋力と集中力を割いていますから。……ルミナ先生、そのまま三時間眠ってください。定時になれば交代します」


サキモリ自身は、不眠不休である。

彼は走行しながら定期的に『中級回復薬』を自らに投与し、筋肉の疲労物質を化学的に分解し、脳の熱を冷ましている。


彼にとって「眠気」とは克服すべきバグであり、ポーションというパッチによって修正可能な不具合に過ぎない。


三時間が経過した。

荒野のど真ん中、サキモリがぴたりと足を止める。


「……定時です。ルミナ先生、起床してください。交代の時間です」


「……ん、もう? あと五分……」


「認められません。次はアリサ殿、貴女の番です。装備を解除し、椅子へ」


「……待て、サキモリ殿。私はまだ戦える。騎士が仲間に背負われて眠るなど、矜持が許さな……」


「アリサ殿」


サキモリは、感情を排した無機質な、しかし絶対的な拒絶を許さない瞳でアリサを見据えた。


「……休息は、個人の感情で決める『権利』ではありません。次なる戦力維持のために、貴女という重装甲ユニットを最適な状態に保つための『義務』です。義務を怠る兵士を、私は指揮下に置くことはできません」


「……っ。……分かった。規律だと言うなら、従おう」


アリサはサキモリの圧倒的な正論に気圧され、不承不承ながらも鎧を緩め、背負い椅子に身を預けた。

サキモリは彼女の巨躯を背負い直すと、何事もなかったかのように再び走り始める。


「……エレン殿、次は貴女です。それまで、索敵精度を落とさないように」


「はい……サキモリ様。……サキモリ様の背中が、アリサ殿で埋まっているのは少し……いえ、なんでもありません。任務を遂行します」


夜の帳が下りても、彼らの足音は止まらない。

焚き火の明かりも、野営の笑い声もない。


ただ、規則正しく響く足音と、定期的に投与されるポーションの瓶が割れる音だけが、月夜に響いていた。


「……休息とは、戦うためにある。それを忘れた時、軍隊は瓦解します」


眠らぬ管理者に率いられた「不沈の四角形」は、世界が寝静まる闇の中を、通常の三倍の速度で突き進んでいった。


第五十一話:完

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