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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二幕・第二章 :資源戦の幕開け「スライムは原油である」

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第四十九話:ダンジョンボスの「資源化」

第四十九話:ダンジョンボスの「資源化」


『粘液の穴』の最深部。そこには、バルバロイ帝国の元勇者たちが「討伐効率が悪すぎる」として見捨てた主、キングスライムが君臨していた。

家一軒を丸ごと飲み込むほどの巨体は、半透明の青い城塞のごとき威圧感を放っている。


だが、その巨躯を見上げるサキモリの瞳に、畏怖の念はない。


「……素晴らしい。当初の予測を二割上回る容積です。これほどの規模の『貯蔵タンク』が手付かずで残っていたとは、管理不行き届きも時には利益を生むようですね」


サキモリは穏やかに言い、背後の仲間に合図を送った。


「テトラ、再起動。今回は『破壊』ではなく『減衰』を目的とします。出力を三割に抑え、コアを傷つけないよう周囲の結合組織のみを焼灼してください」


「了解した。……手加減の方が難しいが、やってみせよう」


アリサがサキモリの背に手を添え、回路を固定する。

ルミナが左肩から膨大な魔力を流し込み、エレンが右側で精密な誘導を開始した。


「――照射」


『灰色の槍』の先から放たれた青白い光が、キングスライムの巨体を正確に穿つ。

通常の魔物であれば一撃で霧散する威力だが、サキモリの制御によって光は「熱による麻痺」として機能した。


キングスライムが苦悶に身を震わせるが、エレンの照準は寸分狂わず、魔物の抵抗力を奪う最小限の部位のみを焼き切っていく。


「……目標、活動停止。これより回収作業に移ります」


サキモリは、膝をつくようにして動きを止めた巨大なスライムへと歩み寄った。

通常、冒険者ならここで核を砕き、討伐完了として魔石を手に入れるだろう。


だが、サキモリの目的は「討伐」ではない。


「……中級回復薬、二本投入」


サキモリは、あえて弱らせたボスに対し、自作の最高品質回復薬を惜しみなく振りかけた。

焼かれた表皮が瞬時に再生し、スライムの肉体が再び瑞々しさを取り戻す。


「……え、おじさん!? なんで回復させてるのよ」


ルミナが驚きの声を上げる。

サキモリは作業の手を止めずに答えた。


「……不純物が混じったままでは品質が落ちます。一度自己修復させ、魔力回路を正常化させた直後の『最高鮮度』の状態で精製を行う。これが、資源の価値を最大化させるための手順です」


サキモリが手をかざすと、スキル『調合』とルミナの精製回路が連動し、キングスライムの巨体が「渦」となって彼のインベントリへと吸い込まれ始めた。

倒すのではなく、生きたまま、最も価値の高い状態で「全量格納」する。


ボスの巨体がシュルシュルと音を立てて収束し、最後に残ったのは、魔力の輝きを失い、ただの無機質な石へと戻った巨大な『核』だけだった。


【貯蔵素材:キングスライム原油(極上)】 【容量:二、五〇〇リットル確保】 【精製完了:不純物ゼロ】


「……全行程、完了です。お疲れ様でした」


サキモリは何事もなかったかのように立ち上がり、埃を払った。

ダンジョンの主を「巨大な原油タンク」として扱い、流れ作業のようにインベントリへ詰め込むその光景は、非道なまでの合理性に満ちていた。


「……全く。ボスを倒して歓喜するどころか、樽に詰めるような真似をするのは、世界で貴殿らくらいだろうな」


アリサが呆れ果てたように、しかし確かな信頼を込めて笑った。


「……次の戦略目標へ移りましょう。これだけの資源があれば、次の行軍はさらに『不沈』に近づきます」


管理者の静かな声が、主を失った空洞に響く。

バルバロイの遺産は、今、一人の軍人の手によって「真の力」へと形を変えようとしていた。


第四十九話:完

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