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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第七章:不沈の四角形(テトラ)、境界の再定義

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第三十三話:唯一無二の『支点』、結合する境界

第三十三話:唯一無二の『支点』、結合する境界


「――各員、配置へ。これより、本機を『不動砲台アンカー』として固定。多角的な同時迎撃を開始します」


サキモリの低く、しかし通る声が戦場に響く。

王都の空を切り裂く重力弾の風切り音が迫る中、四人は絶望の真っ只中で、かつてない奇妙な「陣」を組み上げていた。


「ルミナ先生、出力の主軸をお願いします。……エレン殿、私の視覚野モニターへ演算情報の同期を」

「了解。おじさんの回路を焼かないよう、アリサの盾に熱をバイパスするよ。……集中して!」

「……同期完了。サキモリ様、三極の旗艦、すべて『眼』の内に。いつでもいけますわ」


ルミナがサキモリの左側に立ち、その華奢な掌を彼の肩に添える。

瞬間、サキモリの体躯を膨大な魔力の奔流が駆け抜けた。

それは破壊の衝動ではなく、ルミナの知性によって緻密に制御された純粋なエネルギーだ。


右側では、エレンが白銀の弓を引き絞り、その瞳に宿る真理の光をサキモリの網膜へと転送する。


だが、この構造の「核」は、サキモリの背後にあった。


「――サキモリ。私が支える。一歩も引くなよ」


アリサの声は、サキモリのすぐ耳元で聞こえた。

彼女はサキモリを背中から抱きしめるように密着し、その逞しい腕をサキモリの右脇から通して、彼が構える槍を支える「副木」となった。


ドォォォォォン! と凄まじい衝撃が走る。

アリサがその巨大なアイギスの盾を地面へと深く、文字通りくさびとして打ち込んだのだ。


「これより物理連結ロックを開始する……!」


アリサが魔力を練り上げると、彼女の籠手から伸びた光の帯がサキモリの右腕を巻き込み、アイギスの盾と完全に一体化させた。

サキモリの肉体は今、アリサという「不沈の盾」を介して、王都の大地そのものと接続されたのだ。


「……観測。バイパス経路、正常。反動および過負荷の八割を、アリサ殿の盾が吸収可能と判断」


サキモリは、自らの視界がアリサの熱量と、エレンの冷徹な計算、そしてルミナの魔力で塗り潰されていくのを感じていた。

それは、彼が三十年の人生で一度も経験したことのない感覚だった。


軍人として、観測者として、彼は常に「自分の手」で制御可能な範囲のみを信じてきた。

他者に背後を預けること。自分の肉体の制御権を外部に明け渡すこと。それは彼にとって、死と同義のはずだった。


だが、背中に感じるアリサの力強い鼓動。

彼の右腕を、砕けることも厭わず抱きしめる彼女の体温が、サキモリの思考を「冷徹な数式」から「確信」へと書き換えていく。


「お前は撃つことだけに集中しろ、サキモリ!」


アリサが叫ぶ。

重力弾の着弾衝撃で周囲の瓦礫が舞い上がる中、彼女は一歩も揺るがない。


「砕ける衝撃も、熱も、すべて私が受け止める。お前の右腕は、私が死んでも離さない! だから――最高の一撃を放て!」


「…………了解」


サキモリの瞳が、青白いプラズマの光に染まる。

彼が自分の肉体を「自分のもの」として守ることをやめた瞬間、四位一体の結合は完成した。


物理的支柱、アリサ。

エネルギー源、ルミナ。

精密誘導、エレン。

そして、それらを一点の破壊へと収束させる発射装置、サキモリ。


「目標、三極の敵旗艦。……全回路開放」


サキモリの右手に握られた槍が、極限まで圧縮された魔力の負荷に悲鳴を上げる。

かつては「投擲」という形でしか放出できなかったそのエネルギーが、今やサキモリの肉体を焼くことなく、ただ純粋な「指向性破壊」として右腕に宿っている。


「第一射、装填チャージ。……放ちます」


それは、たった一人の英雄による奇跡ではない。

孤独だった軍人が、初めて隣に立つ者を「部品」ではなく「パートナー」として認めた瞬間に生まれた、新しい世界の物理法則だった。


王都を包囲していた二万四千の軍勢が、その中心から溢れ出した「四角形テトラ」の輝きを前に、一瞬の静寂に包まれた。

次の瞬間、空を、地を、そして因果をも焼き切る極光が、サキモリの右腕から放たれようとしていた。

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