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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第七章:不沈の四角形(テトラ)、境界の再定義

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第三十二話:構造の再設計、三人の合意

第三十二話:構造の再設計、三人の合意


「……聞こえますか。東門、および北壁が突破されました。魔族軍は私の迎撃を無視し、地下の『大地の心臓』へ指向性重力弾の照射を開始。臨界まで残り十分もありません」


瓦礫の山の上に立ち、サキモリは淡々と戦況を報告した。

三十を過ぎた軍人の眼に映るのは、王都を土台から焼き払おうとする二万四千の軍勢。


サキモリ一人の機動力では、三方向の砲撃を同時に止めることは物理的に不可能だった。


「これより単独特攻を開始。私が死ぬまで敵指揮官を足止めし、避難の時間を稼ぎます。……これが唯一、皆さんが生き残るための数式です」


サキモリは槍を回し、死地へ跳ぼうとした。

だが。


「……させないと言っているんだ、この分からず屋が!」


背後から伸びた鋼の籠手が、サキモリの襟を強引に引き戻した。

不沈の騎士団長、アリサ・ガーランド。


その背後には、静かに魔力を練るルミナと、弓を番えるエレンがいた。


「アリサ殿、離してください。一刻を争う状況です」


「黙れ! お前は一人で勝てるだろうが、それでは『王都』が守りきれない。三方向を同時に消し飛ばす火力がなければ、この戦いは詰みだ」


アリサはサキモリの胸倉を掴み、その冷徹な瞳を至近距離で射抜いた。


「……荷電粒子砲は、一発撃てば再装填に半日を要します。連射すれば、私の肉体が消滅する。不可能です」


「なら投げるな。持ったまま撃て。お前の肉体が耐えられないなら、私の『不沈』を台座に使え!」


サキモリの動きが止まった。

物理法則を無視した暴論。


「持ったままでは、反動で王都が瓦解します。あり得ません」


「お前は自分を使い潰すことしか考えていないが、隣にいる私たちは予備パーツじゃない。お前を支え、共に戦場を構築するための構造体だろうが!」


サキモリは絶句した。


今まで、彼は自分以外の人間を、守るべき「弱点」か「変数」としてしか数えてこなかった。

だが、三人の瞳にあるのは弱者の依存ではない。


「身内」を生かそうとする強固な意志だった。


「……今の、魔導力学的には成立可能だよ、おじさん」


一歩前へ出たルミナの周囲に、物理的な圧を伴う膨大な魔力が展開される。

彼女の瞳は、既に勝利への最適解を演算し終えていた。


「アリサの盾を媒介に、冷却系統と外部並列回路を構築してあげる。肉体を通さず、過負荷オーバーヒートを大地へ逃がす――これなら、連射できるでしょ?」


「……わたくしも。アリサ殿の盾から逆算し、射線を網膜へ投影します。……一人で背負うのは、非効率ですから」


エレンの静かな言葉が、サキモリの脳内ログを激しく揺さぶる。

三人の少女による、戦術の再定義。


「……成功確率は三割を切ります。それに、アリサ殿。私の反動を肩代わりすれば、あなたの肉体は……」


サキモリの声が、わずかに震えた。

初めて「誰かを傷つけるかもしれない」という怯え。


アリサはそれを笑い飛ばした。


「私を誰だと思っている。不沈の騎士団長だぞ。……来い、サキモリ。私の魂を、お前の『支点』に使え!」


「…………了解しました」


サキモリは、静かに槍を構えた。


これまで一度も頼ることのなかった他者という「構造」を、生存戦略の正解として受け入れる。


「防衛プロトコルを解除。……アリサ殿、ルミナ先生、エレン殿。私の命、預けます」


不沈の軍人の瞳に、初めて数式ではない「熱」が宿った。


王都の空に、四人の絆が生み出す、冷徹で無慈悲な破壊の序曲が響き始めた。

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