第二百六十三話:【裏切りの輝き:限界突破の代償】
第二百六十三話:【裏切りの輝き:限界突破の代償】
「驚異的な身体能力だねぇ。ほら、ゴールが見えたよ!」
マヨは余韻に浸ることもなく、子供のような足取りでスライムが消し飛んだ先へ走っていってしまう。
「安全確認がまだです。気を付けてください!」
サキモリも即座に心拍を安定させ、崩壊した血管の修復を待ちながら後を追った。仲間たちもまた、その背中を追いかけて光の先へとなだれ込む。
光る出口の先に広がっていたのは、幻想的に発光する苔に覆われた巨大なドーム状の広間だった。
そして中央には、圧倒的な存在感を放つ巨大な透明の水晶が静かに浮遊している。
「これが、ダンジョンコアなの……?」
ルミナが恐る恐る近づき、その神々しさに息を呑む。エレンもまた、吸い寄せられるように歩み寄った。
「そうさ、これがダンジョンコア。さぁ触れてごらん。それだけで限界突破ができる、とても便利な代物さ」
マヨはそう言って、こともなげにダンジョンコアをぺんぺんと叩いて促す。
ルミナ、エレン、アリサ、ミャオは、互いに顔を見合わせながら、それぞれが恐る恐るその水晶に手を触れた。
その瞬間、一同の体が金色に輝き、意識の中に直接ログが流れる。
――レベル上限が九百九十九に開放されました。
「レベルの上限が……上がった!?」
「やったにゃ! なんだか力が漲ってくるにゃ!」
歓喜の声を上げる仲間たち。サキモリもまた水晶に触れ、自身の上限開放を確認した。
しかし、彼はその喜びの最中であっても「構造」への疑念を捨ててはいなかった。
「あとはスキルの秘密を知るだけですね。それと、マヨさんは水晶に触れたのになぜ……」
サキモリが声をかけようとした、その時だった。
「がはっ……!」
「あ……っ!」
複数の濁った声と、短い悲鳴が重なる。
「な、にが……!?」
サキモリが反射的に振り返ると、そこには目を疑う光景があった。
先ほどまで喜んでいた仲間たちが、目にも留まらぬ衝撃で壁に叩きつけられ、深々とめり込んでいたのだ。力なく垂れ下がった腕や足は異様な方向に曲がり、骨が砕ける嫌な音が静まり返った広間に響く。
「……っ、ルミナ先生! アリサ殿!」
致命傷になりかねない惨状。しかし、その衝撃の源はどこにも見当たらない。
サキモリは、背後で冷たい沈黙を守るマヨへ、ゆっくりと首を巡らせた。
「なぜ、水晶に触れたマヨさんは限界突破しないのでしょうか。それと……なぜ私の仲間に攻撃したのですか?」
普段の丁寧で冷静な物腰からは想像もつかない、静かな怒りを帯びた声。
サキモリは、未だにニヤニヤと歪な笑みを浮かべてこちらを見ているマヨを、鋭い眼差しで射抜いた。




