第二百五十一話:【装甲の誕生:ミャオの特攻訓練】
第二百五十一話:【装甲の誕生:ミャオの特攻訓練】
完成した「ミスリル合金チタン」を、サキモリはすぐさま実戦的な形状へと成形した。
出来上がったのは、鈍い銀光を放つ、驚くほど軽量で強靭な「量産型鎧」だ。サキモリはその性能試験のため、最も機動力のあるミャオを被験者に指名した。
「ミャオさん。その鎧を着て、全力でアリサさんの盾へ体当たりをしてください。弾かれても一定時間、意識を保って耐え続けることが条件です」
サキモリの淡々とした指示に、ミャオの耳がピンと逆立つ。彼女はこれまで、アリサの概念盾『アイギス』がどれほどの衝撃を無効化してきたかを間近で見てきた。
「師匠、これ本当に大丈夫かにゃ……? 相手はあのアイギスだにゃ。あたし、お星様になっちゃう気がするにゃ……」
震えるミャオに対し、サキモリは冷徹なまでの「事実」を突きつけた。
「計算上、君の生身の体よりもその鎧の方が遥かに硬いです。教えた通り、着弾の瞬間に受け身を取ることを前提に体当たりすれば、物理的な致命傷は受けないはずです。……行ってください」
「……わ、分かったにゃ! 師匠を信じるにゃ!」
ミャオは覚悟を決めると、弾丸のような速度でアリサへと突っ込んだ。
ドォォォォン!
凄まじい衝突音とともに、ミャオの体が紙屑のように弾き飛ばされる。地面を数回転し、拠点の壁際でようやく止まったミャオのもとへ、ルミナが慌てて駆け寄った。
「ちょっとおじさん! 無茶させすぎよ! ミャオ、大丈夫!?」
ルミナの治癒魔法を受けながら、ミャオは目を回しつつもフラフラと立ち上がる。
だが、周囲にいたエレンやアリサは、ある異様な事実に目を見開いた。
「……信じられない。あれだけの衝撃を受けて、鎧に傷一つ、凹み一つ付いていないなんて」
アリサが盾を確認しながら戦慄する。概念の盾と正面からぶつかり、物理的に吹き飛ばされながらも、サキモリの作った装甲は新品同様の輝きを保っていた。
「まだまだ、改良の余地がありますね」
サキモリはミャオの容態よりも先に、鎧の表面を凝視して呟いた。
「鎧自体の強度は合格点ですが、内部への衝撃透過率が想定より高い。着用者へのダメージがあまり緩和されていません。これでは兵士が脳震盪を起こします」
「師匠……あたしの心配も少しはしてほしいにゃ……」
涙目になるミャオをよそに、サキモリはすでにストレージ内の設計図を広げ、内部緩衝材の構造変更に着手していた。
この男にとって、仲間の献身は「最高のデータ」であり、それを形にすることこそが最大の誠実さだった。
「ミャオさん、次は緩衝材の厚みを変えます。もう一度、お願いします」
「にゃああああ! 師匠は鬼だにゃー!」
拠点の地下に、再び金属の激突音が響き渡る。
理想の「絶対防御」が完成するまで、サキモリの試行錯誤が止まることはなかった。




