第二百四十九話:【再臨の深淵:根こそぎの採掘】
第二百四十九話:【再臨の深淵:根こそぎの採掘】
かつて死闘を繰り広げ、この世界の「資源」の片鱗を見せつけた大鉱脈ダンジョン。
サキモリたちは再び、その薄暗い最下層へと足を踏み入れていた。目的は明確だ。帝国の軍備を根底から書き換えるための超硬質素材――ミスリル、アダマンタイト、そしてチタンを身に纏うゴーレムたちの心臓である。
「おじさん、またここに来るなんて。前より進むスピードが上がってない? 景色が流れていくみたいなんだけど!」
上空を浮かぶルミナが、呆れたように声を上げる。
彼女の視界の下では、かつては帝国一の精鋭でも苦戦したはずの岩石ゴーレムたちが、まるで収穫を待つ稲穂のように次々と「処理」されていた。
「皆さんがそれだけ強くなっている証ですよ。私も収集の効率を最適化しました」
サキモリは足を止めることなく、手にした愛槍を機械的な正確さで突き出す。彼の一撃は、ゴーレムの構造的な「弱点」を的確に捉え、一撃で魔力核を粉砕する。
崩れ落ちる巨体。だが、それが地面に触れるより早く、サキモリのストレージがその残骸を丸ごと吸い込んでいく。
「一粒の塵も残しません。これらすべてが、兵士たちの命を守る部品になるのです」
サキモリの背後では、エレンの矢がチタンゴーレムの関節を射抜き、動きを止めた瞬間にミャオが神速の打撃でトドメを刺す。
さらに、アリサが重厚な盾でアダマンタイト製のゴーレムをシールドバッシュで砕き飛ばすと、サキモリの並列加工機能がその質量を瞬時に「素材」として分解、格納していった。
進撃は止まらない。
かつては数日を要した深層への道のりを、彼らはわずか数時間で駆け抜けていた。道中に存在したはずのゴーレムは一匹残らず消え去り、壁面に露出していた希少な鉱脈も、サキモリが通り過ぎるたびに剥ぎ取られ、滑らかな岩肌へと変貌していく。
「にゃはは! おじさんのカバン、底なしだにゃ!」
「……ええ。ですが、まだまだ足りません。帝国の全軍を武装させるには、このダンジョンの『底』まで叩く必要があります」
サキモリの視線の先、ダンジョンの最深部で待ち構えていたボスゴーレムが姿を現す。
山のような巨躯を誇るその守護者は、全身が希少なミスリルで構成された「富の塊」であった。
しかし、サキモリの瞳に映っているのは強敵への敬意ではなく、純然たる資源としての評価グラフだ。
「これは使えそうです」
サキモリは静かに、しかし冷徹に槍を構え直した。
次の瞬間、爆音と共にボスゴーレムの腕が弾け飛ぶ。
かつては帝国の脅威であった深淵の主が、今はただの「高純度インゴットの原材料」として、サキモリの設計図の中に組み込まれていった。




