第二百四十五話:【白銀の帰還:聖都の歓喜】
第二百四十五話:【白銀の帰還:聖都の歓喜】
地響きのような駆動音を響かせ、巨大な「富」を積んだ列車が聖都クリスタの駅へと滑り込んできた。
荷台に山積みされた純白の塩と、鉄のように固く締まった干し魚の姿。それらが露わになった瞬間、ホームを埋め尽くしていた国民から地を揺らすような歓声が沸き上がった。
駅に降り立ったサキモリたち五人を、聖女シェーレと宰相メイが迎える。
「……信じられません。これほどの物量を、これほど短期間で用意されるとは」
山を成す物資を見上げ、メイが呆然と呟いた。その横で、シェーレは深く頭を下げる。
「サキモリ殿、まずは感謝を。あなた方が持ち帰ったこの『白銀』は、飢えと渇きに苦しむ数万人の民を救う、真の希望になります」
「礼には及びません。これは単なる構造の最適化と、皆さんの尽力の結果に過ぎませんから」
サキモリが淡々と応じると、一行はそのまま現状の報告会へと移った。
「それで、実際の配給状況はどうなっていますか?」
サキモリの問いに、メイが手元の書類を整理しながら答える。
「劇的に改善されつつあります。サキモリ殿が以前に整備した物流網と、今回届いた大量の塩。これによって食料の保存性が飛躍的に高まりました。以前なら腐らせていた物資が、今は隅々の村々まで届いています」
「おじさんの作った列車、本当に役に立ってるわね。街の人の顔色が、前よりずっと明るくなった気がするわ」
ルミナが窓の外を見やりながら、嬉しそうに微笑んだ。
「ええ、その通りですわ。治安も安定してきました。お腹が満たされれば、人は争わなくなるものですから」
アリサも同意するように頷く。
サキモリが着任して以来、帝国は単なる軍事国家から、生産と物流による安定した「産業国家」へと変貌を遂げつつあった。
「にゃー、でもこれで終わりじゃないにゃ? ストレージの中にはもっとすごいものが入ってるんだにゃ!」
ミャオが自慢げに胸を張ると、サキモリが補足した。
「ええ。ストレージ内には十トン分に相当するポーションの原材料を格納しています。並列加工で調合を終え次第、戦場の前線へ四割を提供することで被害を抑えられますし、残りを各医療機関へ。これで疫病の懸念も、統計学的な安全圏まで抑え込めるでしょう」
「食料、物流、そして衛生。サキモリ殿、あなたの持ち込んだ『仕組み』が、この帝国の血管に血を通わせたのです」
シェーレが改めてサキモリの瞳を見つめ、感謝を伝える。
説明口調を排し、互いの成果を認め合うその場には、産業革命がもたらした確かな手応えが満ちていた。
「次に私ができる支援策は戦場を優先したいと思っています。私たちが介入する以上の効果を望める、食料、医療、そして装備に関する支援策を考えてまた相談させてください」
サキモリは感情を排した、しかし誠実な声音で言葉を継いだ。
「戦場のほかの勇者の方や兵士たちが志半ばで倒れぬよう、力を発揮できず無駄に傷つかぬよう、できる限り後方から、参戦する以上の支援対策をとるつもりでいます」
歓声が止まぬ聖都の喧騒を背に、サキモリはすでに次の戦場を支えるための設計図を広げていた。




