第二百四十三話:【浜辺の薬学:海ポーションの原典】
第二百四十三話:【浜辺の薬学:海ポーションの原典】
食料の確保を終えたサキモリが次に狙いを定めたのは、帝国の衛生環境を劇的に改善するための医薬品だった。
彼は前世でその有用性を知っていた「ハマボウフウ」や「ハマゴウ」といった、鎮痛・治癒効果の高い海浜植物の群生場所を正確に特定していく。
「これより、医薬品の原材料を収集します。ルミナ先生は『魔法の手』を全力展開、ミャオさんは全力疾走で広域を、エレンさんは長距離の索敵をお願いします」
サキモリの指示が飛ぶと同時に、三人が海岸線を縦横無尽に駆け巡り始めた。
「おじさん、任せて! 空から全部見つけてあげるわ!」
ルミナが空中で無数の魔力の手を操り、崖の隙間に咲く薬草を丁寧に摘み取っていく傍らで、ミャオが砂浜を雷光のような速さで駆け抜け、一瞬で背負い袋を薬草で満たしていく。
さらに遠方では、エレンが千里眼を駆使して貴重な群生地を見つけ出し、確実に採取を進めていった。
「この世界の特有種である海藻も重要です。光系統の魔力を帯びたこれらは、強力な『海ポーション』の核となります」
運び込まれる膨大な薬草と海藻を、サキモリは次々と自身のストレージへと放り込んでいく。
百トンもの容量を誇る彼のストレージは、瞬く間に緑と青の資源で埋め尽くされ、その占有率は七割に達した。
その背後では、アリサが一人、重厚な金属音を響かせていた。
「拠点の安全がなければ、これら貴重な資源も略奪の的になりますわ」
彼女はトールハンマーを振るい、拠点を守るための巨大な防衛柵を大地に深く打ち込んでいく。
それは単なる囲いではなく、聖騎士の加護と物理的な強固さを兼ね備えた、鉄壁の防波堤であった。
採取が完了する頃、ストレージ内部ではサキモリの「並列加工」による自動調合が静かに始まっていた。
「拠点の整備、ならびに資源の確保は完了しました。一度、聖都へ戻りましょう」
サキモリの言葉に、仲間たちは充実感に満ちた表情で頷いた。
砂浜に刻まれた防衛線の内側には、帝国の未来を支える膨大な「命の素」が蓄積されていた。




