第二百三十話:【大陸横断鉄道、仮開通:西の盟約】
第二百三十話:【大陸横断鉄道、仮開通:西の盟約】
クレイオス公国、そして小国アルタ。
鋼鉄の軌道はついに西側の主要諸国を繋ぎ切り、大陸横断鉄道の仮開通という歴史的瞬間を迎えた。
各国の王や代表が一堂に会したアルタの地では、サキモリが提供した最高級ポーションと干し肉による祝宴が華やかに執り行われていた。
作業を終えた一行の間にも、達成感と未来への高揚感が漂っている。
「エレン、次は私の国まで一気に引くわよ。準備はいい?」
作業の工程そのものが楽しくなってきた様子のルミナが、上機嫌に問いかける。
「ええ、ルミナ様。私とルミナ様の国が鉄道で繋がるなんて、本当に素敵ですわ。どこまでもレールを伸ばしましょう。それが皆様の幸せに繋がるのでしたら」
エレンもまた、聖女のような微笑みを浮かべて頷いた。
祝宴の最中、サキモリはアルタの国王エドワード、そして王女プリシラとの再会を果たした。
「この世界に呼ばれて、本当によかったと思っています。死んだはずの自分が今もこうして戦い、民のために働ける。その機会を頂けたことに感謝を」
淡々と、しかし静かな情熱を込めて感謝を述べるサキモリ。
その言葉にエドワードとプリシラは感極まり、彼を固く抱擁した。
サキモリは二人への「返礼」として、近衛兵長と兵士数名を招集し、城壁に設置した巨大な装置を指し示した。
「これは『超大型蒸気バリスタ』です。水を貯め、木炭を燃やすだけで、兵士の槍と同サイズの鉄の矢を高速連射できます。極めて威力が高い防衛兵器です。これを十基、この国に置いていきます。より優れたものが完成した際は、鉄道を通じて支援をお約束します。私が不在の間も、国の守りをお願いします」
深々とお辞儀をするサキモリの姿に、兵士たちは身の引き締まる思いでその新兵器を見上げた。
「これで西側の整備は完了です。帰り道では各国の城壁にこの蒸気バリスタを十基ずつ設置していきましょう。一基を私が手本として据え、残りは指導を受けた兵士の方々に任せます」
サキモリは仲間たちへ向き直り、その視線を遥か東へと向けた。
「それが終わったら、メイさんとの約束通り……東を目指しましょう。莫大な収益と、何より人々の命を支える『塩』の海、その拠点を造りに行くために」
魔法という不確実な奇跡を超え、鉄と蒸気がもたらす「確実な未来」を見据え、サキモリの演算は既に次なる海岸線の風景を描き出していた。
(第四章「大陸横断鉄道編」 完)




