第二百二十九話:【騎士の誇りと鋼鉄の馬:軍事国ガーランドへの到達】
第二百二十九話:【騎士の誇りと鋼鉄の馬:軍事国ガーランドへの到達】
鉄の轍は獣人の森を抜け、峻厳な岩山に囲まれた軍事国ガーランドへと至った。
境界の砦を守る聖騎士たちは、地響きと共に土煙を上げて爆進してくる巨大な鉄の塊を視認し、色を失う。
彼らにとって、それは既存の魔獣を遥かに凌駕する「未知の怪物」の襲来に他ならなかった。
「総員、構え! 迎撃用意――ッ!」
かつてアリサが率いていた部下たちが、震える手で剣を抜き、盾を構える。
しかし、減速しながら駅の予定地へと滑り込んできた「怪物」の先頭には、見紛うはずもない自分たちの主の姿があった。
「ア、アリサ殿!? その怪物を……貴女が操っているのですか!?」
あまりの光景に狼狽える聖騎士たちに対し、アリサは機関車のデッキから、凛とした、しかしどこか晴れやかな表情で彼らを見下ろした。
「これは怪物ではなく、平和を運ぶ『道』です。……皆、久しぶりですね。挨拶代わりにこの干し肉を食べなさい。ガーランドでは滅多に取れないレッサードラゴンの干し肉ですから、美味しいですよ」
アリサが誇らしげに差し出した保存食は、サキモリの指導のもとで加工された最高級の逸品であった。
かつての部下たちは、その肉の確かな重みとアリサの変わらぬ威厳に触れ、武器を捨てて感涙に咽んだ。
「隊長……! よくぞ、よくぞご無事で……!」
元部下たちとの熱い涙の再会が繰り広げられる傍らで、サキモリは既に機関車のボイラーを点検し、次なる目的地への敷設プランを演算していた。
「感動の時間は一時間で切り上げてください。次はクレイオス公国、そしてアルタを目指します」
サキモリの淡々とした声が、感傷に浸る騎士たちの耳に、新しい時代の到来を告げる鐘の音のように響いた。
(第二百三十話へ続く)




