第二百二十七話:【合理のわがまま:西への延伸と塩の約束】
第二百二十七話:【合理のわがまま:西への延伸と塩の約束】
中央駅の完成に沸く聖都で、サキモリは次なる「軌道」の敷設プランを提示した。
提案されたのは、獣人国カーマイン、クレイオス公国、軍事国ガーランド、そして小国アルタを繋ぐ大陸横断鉄道の建設である。
それは単なる物流の確保ではない。
これから発展する技術や防衛力を同盟各国へ均等に配備し、すべての自国の民と周辺諸国の平穏を守り抜くという、サキモリの揺るぎない理念に基づいた布石であった。
だが、現実的な国家運営を担う宰相メイは、その広大な計画を前に難色を示す。
「……サキモリ殿、お言葉ですが、現状の我が国の国力でそれら全ての国へ線路を伸ばすのは、経済的メリットが薄すぎます。優先順位を見直すべきではありませんか?」
その指摘を予見していたかのように、サキモリは淡々と、しかし極めて具体的な「対価」を口にした。
「この西側諸国への敷設が完了次第、私は未開拓である東海岸の開発に着手します。そこを塩、食糧、そして各種機材の巨大な生産拠点へと変貌させ、港を整備して大帝国クリスタの東南部との流通を劇的に強化します」
「塩……! あの美味しい干し肉を、それこそいくらでも作れるようになるのですか!?」
食糧事情の劇的な改善を察した王女シェーレが、期待に胸を膨らませて身を乗り出す。
メイもまた、その「東海岸開発」がもたらす莫大な収益と国家的な利得を瞬時に計算し、態度を豹変させた。
「……わかりました。塩や食糧、そして圧倒的な収益が約束されるというのであれば、今のわがままは飲みましょう。というより、我が国へのメリットが大きすぎて反対する理由がありません。全面的に賛成しますわ」
サキモリは現金な宰相の反応に小さく頷くと、準備を整えていた仲間たちへと視線を向けた。
「さあ、まずは西へ。レールの先にある、私たちを支えてくれた国々を迎えに行きましょう」
サキモリの合図が響く。
爆音を上げる「トールハンマー」の振動、舞い上がる風の魔力、そして神速で軌道を敷いていくミャオの足跡。
四人の完璧な連携による「爆速敷設」が、西の地平線を目指して力強く伸び始めた。
(第二百二十八話へ続く)




