第二百二十六話:【黎明の汽笛:聖都中央駅の誕生】
第二百二十六話:【黎明の汽笛:聖都中央駅の誕生】
聖都クリスタの城門前。
静寂に包まれていた広場に、突如として巨大な鉄の塊が顕現した。
サキモリが鉱山から持ち帰った「蒸気機関車」である。
その威容に王女シェーレと宰相メイが息を呑む間もなく、サキモリは淡々と作業の開始を告げた。
「これより、帝国の新たな動脈、その起点となる『駅』を構築します。各自、練習通りに」
合図と共に、一行は一糸乱れぬ連携を見せる。
まずエレンが空へ跳び、超小型の連鎖爆裂矢を放つ。
爆圧は地表をえぐるのではなく、サキモリが指定した座標を精密に掘り下げる「採掘」として機能した。
開いた穴へ、サキモリがストレージからモルタルと土砂を即座に流し込む。
そこへアリサが肉薄した。
彼女は概念盾「アイギス」の形状を巨大な台形の鎚へと変形させ、新技「トールハンマー」を振り下ろす。
「――はぁぁぁっ!」
凄まじい衝撃波と共に、流し込まれた土砂が極限まで圧縮され、瞬時に強固な盤面へと変わる。
その盤面が完全に固まるまでの数秒という隙間を、ミャオが風のような速度で駆け抜けた。
「にゃっ! 固まる前に逃げるにゃ!」
ミャオが神速でレールを並べ、固定具を打ち込んで離脱する。
直後、ルミナが風魔法による超速乾燥を施し、地盤を完全に定着させた。
「ミャオちゃん、そこ足跡ついてるわよ。もう一回プレスしなきゃ」
「にゃあぁ!? 勘弁してほしいにゃ! プレスされたらぺったんこになっちゃうにゃ!」
楽しそうに巨大な盾の鎚を振り上げるアリサと、必死に逃げ回るミャオ。
そのやり取りの最中も、サキモリの手によって木造と鉄で補強された「簡易駅舎」がみるみるうちに組み上がっていく。
半日。
かつての建築常識を嘲笑うかのような速度で、聖都中央駅がその姿を現した。
機関車の後ろには三両の貨車が連結され、国庫から運び出されたばかりの木炭が山積みにされる。
サキモリがボイラーに火を灯すと、腹に響くような重厚な駆動音と共に、白い蒸気が天を突いた。
「出発します」
鳴り響く長大な汽笛。
駅の目前に急造された、車両の交差と減速を兼ねた直径五百メートルのループ線路。
そこを、数トンの貨物を積んだ巨体が軽々と、かつてない速度で滑り始めた。
「これほどの重さが……馬すら使わずに、この速度で……!」
メイは計算尺を落としそうなほど震えて歓喜し、シェーレは蒸気の白煙の向こうに見える「新しい世界の形」に、ただ感動のあまり言葉を失っていた。
(第二百二十七話へ続く)




