第二百二十五話:【鋼鉄の凱旋:50トンの質量】
第二百二十五話:【鋼鉄の凱旋:50トンの質量】
大鉱山ダンジョンの最深部。
エレンが放った最後の一矢がボスの核を完璧に射抜き、守護者の沈黙とともに完全解体が完了した。
サキモリのステータスは、この遠征でさらなる高みへと到達している。
調合熟練度は「60」へと跳ね上がり、そのストレージ容量は100トンを記録。
さらに、加工スキルの熟練度も「30」へと達し、一つあたり400メートル四方という広大な加工ストレージが展開されていた。
重量制限のないその特異な空間には、量産された巨大な蒸気機関車と精緻な鉄鋼機械が、秩序正しく整列し、地上への出撃を待っていた。
サキモリが一時的に顕現させた「鉄の馬」の威容を目の当たりにし、仲間たちはそれぞれに驚嘆の声を上げた。
「……これが馬より速く動き、より多くの荷を運ぶというの? 船ではなく地上を走る、まるでドラゴンのような馬車だね」
ルミナは知的好奇心に瞳を輝かせ、構造を読み解こうと深く頷いた。
「人を運ぶこともできるなんて、とても素敵ですわ。乗り心地はよろしいのかしら?」
エレンは優雅に微笑みながらも、未知の文明の利器への興味を隠しきれない。
「防御力も極めて高そうです。兵士を運び、物資を運ぶ。これは守備の概念をも変えてしまいますね」
アリサは盾を構えるのも忘れ、子供のように目を輝かせて鉄の巨体を見上げていた。
「馬より速くてゴーレムよりでかいにゃ。ボスのゴーレムより、あたしはこの鉄の馬の方が怖いにゃ……」
ミャオだけは、その圧倒的な無機質の質量に気圧され、しっぽを丸めて震えていた。
サキモリは彼女たちの反応に静かに頷き、
「詳しい用途と説明については、聖都に戻ってから行います」
と告げ、再びそれらを空間の狭間へと格納した。
ルミナの回復魔法によって数日間の不眠不休の疲労を拭った一行は、地上へと這い出す。
その足取りは軽い。
しかし、サキモリがその身に宿しているのは、もはや一つの文明を運ぶ巨大な「揺りかご」と呼ぶべき重みであった。
「これで、帝国に『血管』を通す準備が整いました。鉄道を含むあらゆるインフラを、一つずつ確実に敷設していきましょう」
サキモリの言葉と共に、一行は帝都への帰路に就く。
彼が手中に収めたのは、古の魔法を超越した「鉄と蒸気」という名の、世界を根底から書き換える力であった。
(第三章「産業革命編 第二章」 完)




