第二百二十四話:【死闘の演算:ジャイアントアイアンゴーレム】
第二百二十四話:【死闘の演算:ジャイアントアイアンゴーレム】
大鉱山ダンジョンの最深部。
そこに鎮座するのは、レベル88を誇る守護者「ジャイアントアイアンゴーレム」である。
通常、レベル90以上の勇者がパーティを組んでようやく打倒し得るこの巨獣は、全身を巡る複数の微小なコアが絶えず移動し続けるため、一撃で無力化することは不可能に近い。
だが、サキモリの瞳に映るのは、史上稀に見る「最高級の鉄鋼資源」の山に過ぎなかった。
戦闘の幕が上がると同時に、アリサが咆哮を上げ、概念盾「アイギス」を正面に据える。
巨獣が振り下ろす鉄腕の衝撃を完璧に受け止め、シールドバッシュによってその腕を粉砕し続ける。
「再生を待つ必要はありません。部位が形成される端から削り取ります」
サキモリの冷徹な指示。
彼は槍を振るい、巨獣の足部を再生が追いつかない速度で破壊し続ける。
剥がれ落ちた鉄鋼の破片は、地面に落ちる前にストレージへと吸い込まれていく。
再生の暇さえ与えないその様は、戦闘というよりは苛烈な「解体ライン」であった。
ミャオは回避に専念しながら、サキモリの指示通りに装甲の薄い部分を削り、散らばる素材の回収を手伝う。
後方ではルミナが戦場全体を俯瞰し、疲弊するアリサとミャオへ随時回復魔法を飛ばし、戦線の安定を維持していた。
そして、アリサの影に守られたエレンが、正確無比な一矢を放つ。
巨体内を移動する微小なコアを、一つ、また一つと確実に射抜いていく。
この極限の効率化により、サキモリのストレージ内では次々と高度な鉄鋼製品が形を成していく。
余剰となった材料もすべて格納され、彼の調合熟練度はついに「50」へ到達。
調合ストレージは50トンもの容量を誇るに至った。
特筆すべきは「加工スキル」の進化である。
熟練度の向上により、加工用ストレージの空間は一つあたり200メートル四方へと拡大。
重量制限のないこの特異な空間には、量産された膨大な鉄鋼機械と完成品が、帝国の「心臓」として静かに並んでいった。
敵の再生能力すらも「無限の素材供給源」として利用し尽くす、サキモリの演算。
かつては侵入者を絶望させた巨獣の金属的な悲鳴は、ストレージ内で鳴り響く無機質な「加工音」にかき消され、ただの記録へと変わっていく。
「……これで、帝国の骨格を成す鋼は揃いました」
資源としての「主」を刈り取ったサキモリの背後で、巨獣の残骸が最後の火花を散らした。
(第二百二十五話へ続く)




