第二百二十三話:【防衛の進化:バリスタと蒸気機関】
第二百二十三話:【防衛の進化:バリスタと蒸気機関】
大鉱山ダンジョンから得られるタングステンやクロムといった希少金属は、サキモリの加工スキルによって次々と「帝国の未来」へと姿を変えていった。
サキモリは余った材料を余さず活用し、帝国防衛の要となる「バリスタ(大型弩砲)」を量産する。
それは単なる弩砲ではない。
蒸気機関を単体ユニットとして組み込み、その強力な外燃機関の圧力を用いることで、人力では不可能な威力を維持したまま、機関銃の如く連射を可能にした未知の防衛兵器であった。
さらに彼の創造は軍事転換に留まらない。
蒸気機関を搭載した二気筒の農業用車両を組み上げ、タイヤにはメンテナンスフリーのノーパンク系素材を採用。
これらを量産することで、のちの農業効率を劇的に向上させる算段である。
蒸気機関車本体と並行し、それらが牽引する貨物列車もまた、鉄や銅を贅沢に使用した堅牢な造りで生成されていく。
この圧倒的な生産効率を支えているのは、資源回収の「最適化」であった。
エレンは索敵を兼ねた魔弓で、遠距離からゴーレムのコアを確実に射抜き、回収の速度を引き上げる。
さらに敵が少ない場面では、あえてコアを外してゴーレムの体だけを破壊。
剥がれ落ちた破片をルミナの魔力で即座に回収し、再生したゴーレムをエレンが再び削る。
アリサはその巨体をアイギスで押し留め、再生の時間を稼ぐ役割を担った。
もともとその場に存在する個体数以上の資源を得るため、彼らはゴーレムの「再生能力」そのものを、尽きることのない鉱脈として利用していた。
「……ゴーレムを倒してるんじゃなくて、掘ってるみたいだにゃ」
本来ならば恐怖の象徴であるはずの守護者が、無情にも「採掘対象」として扱われる異様な光景に、ミャオは呆れたように声を漏らす。
「はい、掘ってるんですよ」
エレンは微笑みながら次の一矢を番え、アリサもまた、盾に響く金属音を背に「うんうん」と深く頷いた。
「武力による平和ではなく、技術による抑止力を構築します」
サキモリの宣言通り、拡張された加工ストレージには、もはや小国の軍事力を容易に凌駕するほどの兵器群、そして産業基盤となる重機械が整然と眠っていた。
それは、魔法の理で停滞していた世界に、鉄と蒸気の波が押し寄せる前兆であった。
(第二百二十四話へ続く)




