第二百二十二話:【軌道の錬金術:移動する工房】
第二百二十二話:【軌道の錬金術:移動する工房】
大鉱山ダンジョンの深部へ進む足跡は、そのまま文明の轍へと変わっていった。
サキモリは、アリサやエレンがゴーレムを解体する傍らで、回収したばかりの鉄、鉛、石炭、そして大森林から持ち込んだ木材をストレージへと放り込み続ける。
彼の脳内では、新たに取得した「加工スキル」がフル稼働していた。
歩みを止めることなく、ストレージ内部で鉄鋼素材を精錬し、枕木を切り出し、それらを組み合わせて「鉄道のレール」をコツコツと構築していく。
無限に供給されるゴーレム由来の素材と、サキモリの規格外な演算能力により、生産されるレールの数は数万、数十万という途方もない単位に達していった。
この異常なまでの生産活動に伴い、サキモリの加工熟練度はついに「10」を突破する。
その瞬間、加工アイテムをストックするストレージ空間は物理法則を無視して飛躍的に拡張された。
「……空間の安定を確認。一区画あたり、200メートル四方にまで拡張されました」
拡張された巨大なストレージ内部は、もはや単なる倉庫ではなく、巨大な「移動工場」へと進化した。
サキモリはその広大な空間を使い、レールだけでなく、蒸気機関の心臓部となるボイラーやシリンダー、複雑な歯車機構の量産を開始する。
移動しながらにして、一国の工業力を上回る規模の製品が、無機質な音を立てて組み上がっていった。
「師匠、また新しい草を見つけたニャ! ……って、何だか師匠のストレージの中から、凄まじい金属音が響いてくるんだけどニャ?」
ミャオが洞窟の隅々を駆け回り、必死に薬草を採取して戻ってくる横で、サキモリは平然と作業を継続していた。
彼のストレージ内部では、量産された部品が一つに統合され、巨大な「蒸気機関車」の車両がその重厚な姿を現し始めていた。
それは、魔術に依存しきったこの世界を、鉄と蒸気の力で塗り替えるための「鉄の馬」であった。
(第二百二十三話へ続く)




