↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二巻:第三幕:大帝国クリスタ編 第一章「大帝国への道」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
209/249

第二百十話:【改善の合意:救国への第一歩】

第二百十話:【改善の合意:救国への第一歩】


王城の作戦会議室。卓上に広げられたのは、サキモリが観測データから導き出した「帝国の再設計図」である。


それは、かつての勇者たちが示した魔王討伐の策ではなく、国家という巨大な装置を根底から作り直すための、緻密な工程表であった。


サキモリは、集まった王女と宰相、そして動揺を隠せない重鎮たちを前に、淡々と、しかし断固とした口調で指示を飛ばす。


「まず、倉庫に死蔵されている採掘時の副産物――石灰をすべて供出してください。これでモルタルを生成します。工業・土木の人材、および近衛軍を動員し、既存の街道を掘り起こしてモルタルによる簡易コンクリート道路を敷設します。物流の抵抗を物理的に排除するのが先決です」


あまりに具体的な提案に、室内には困惑が広がる。


だが、サキモリの「介入」は止まらない。


「その工事期間中、私たちが資材を確保してきます。宰相メイ殿、効率的に資源が採取できる『鉱山ダンジョン』と『大森林ダンジョン』の開放を。私たちが先頭に立ち、採取と加工を並行して行うことで、レベルと熟練度を上げつつ必要な資材を持ち帰ります。それまで、国内ではひたすら道路を整備してください」


さらにサキモリは、帝国の産業構造そのものにメスを入れた。


武器防具の生産を一時中断し、林業従事者と鍛冶師を総動員して石炭・木炭の生産をフル稼働させること。農業従事者には「草刈り」と「森林からの腐葉土採取」を命じ、排泄物と共に発酵させて大規模な肥料生産体制を整えること。そして、飢餓を脱するために、作物の九割を豆類と芋類に強制転換させること。


「……それは、あまりに民への負担が大きすぎませんか? 私たちの民は、もう限界なのです」


聖女シェーレと呼ばれる王女が、その慈愛ゆえに悲痛な声を漏らす。


しかし、その言葉を遮ったのは、実務の過酷さを知る宰相メイであった。


「……いいえ、シェーレ様。サキモリ殿の言う通りです。今やらねば、国そのものが死にます。甘い言葉で民をなだめる段階は、とうの昔に過ぎ去っているのです」


沈黙が会議室を支配した。


王女の優しさと、宰相の冷徹な現実感。その二つを繋ぎ止めるように、サキモリは「結果」を提示し続けた。


最終的に、サキモリが策定した基本戦略を軸に、彼が現地を視察しながら段階的に環境を整えていくことで、三者の合意が成立した。


それは、剣と魔法による解決ではなく、産業と内政による「国内経済と自国民の救済」という、新たな戦いの始まりであった。


「……では、始めましょうか。帝国クリスタという巨大な国家の、大改修(オーバーホール)を」


サキモリの宣言と共に、重厚な扉が開かれる。


外では、彼が命じた「新しい道」を作るための槌音が、早くも響き始めていた。


圧倒的な戦力と文明を誇りながらも、内側から朽ちかけていた巨人が、一人の「防人」の手によって、産業革命という未知の熱狂へと突き動かされていく。


(第三幕 第一章「大帝国への道」 完 / 次章「産業革命編」へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。