↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第二巻:第二期:獣人国編【武の証明と新たなる道】後編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
195/255

第百九十六話:【覚醒のミャオ:流転する猫】

第百九十六話:【覚醒のミャオ:流転する猫】


袋小路の路地裏。


サキモリが姿を消し、静寂がミャオを包み込む。


だが、その静寂はすぐに、十二人の刺客が放つ冷酷な殺気によって塗り潰された。


「……師匠」


ミャオは小さく呟き、震える拳を握りしめた。


刺客たちのレベルは自分より遥かに上。


本来であれば、逃げることさえ叶わぬ絶望的な盤面。


だが、刺客が最初の一歩を踏み出した瞬間、ミャオの脳裏にこれまでの「洗礼」が鮮烈な光を伴ってフラッシュバックした。


(動くニャ。構造を、思い出すニャ……!)


まず、サキモリの教え。


「力はいりません。筋肉の末端ではなく、大地の反動を骨盤に伝え、重心移動そのものを質量に変えるのです」


ミャオは襲い来る刃を、紙一重の足捌きで回避した。


避けるのではない。


相手の重心が崩れる「構造の隙間」に、自分の軸を滑り込ませるのだ。


次に、エレンの教え。


「数式を読みなさい。相手の二手、三手先を潰し、常に死角を突き続けるのです」


一本の矢が自分を射抜く軌道ではなく、刺客全員が織り成す「攻撃の網目」を予測する。


ミャオは一箇所に留まらず、壁を蹴り、屋根を跳ね、常に敵の包囲網に「澱み」を作るように動き続けた。


そして、アリサの教え。


「避けきれないなら、構造的に最もダメージの少ない箇所で受け流すのだ」


背後から迫った暗器の切っ先を、ミャオは最小限の角度で肩の肉に掠めさせ、その衝撃を利用して前方へ加速した。


激痛が走るが、止まれば死ぬ。


最後に、ルミナの教え。


「痛みを無視して、足を止めずに『生』へ執着するんだよ」


肺が焼けるような熱さを帯び、呼吸が乱れ始める。


だが、ミャオは自らの呼吸を「構造的」に制御し、魔力を血流に強制循環させた。


ルミナのあの底知れない微笑みを思い出し、恐怖を無理やり闘志で塗り潰す。


「あたしは……死なないニャ! まだサキモリに、褒めてもらってないニャアア!」


ミャオは叫びと共に、刺客の死角を突いて最後の一人を吹き飛ばし、包囲網の唯一の「破れ目」を駆け抜けた。


一時間後。


追っ手を振り切り、町外れの丘の上で朝日に照らされたミャオは、満身創痍のまま膝をついた。


全身は切り傷と打撲でボロボロ、自慢の毛並みも汚れきっていたが、その瞳にはかつてない確信の光が宿っていた。


「……サキモリ師匠! 見てたかニャ! あたし、やったニャ!」


彼女は空を仰ぎ、喉が枯れるほどの声で叫んだ。


その視線の先。


遠く離れた木陰で、サキモリは手帳に筆を走らせながら、静かに呟いた。


「……及第点です」


ミャオは知らない。


サキモリから手紙で事態を把握していたアリサ、ルミナ、エレンの三人が、すでに裏で動いていたことを。


アリサが完璧な守護で退路を確保し、ルミナが広域索敵で刺客の位置を特定し、エレンが精密な魔弓術によって、ミャオが突破した後の刺客たちを音もなく全滅させていたことを。


ミャオが見た朝日は、師匠たちの「過保護なまでの工作」によって守られた平穏の一部に過ぎなかった。


だが、彼女が掴み取った「覚醒」の感覚だけは、紛れもない本物であった。


(第百九十七話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。