第百七十三話:【謁見:獣の品定め】
第百七十三話:【謁見:獣の品定め】
翌日、サキモリたちは再び獣人王グレンとの謁見に臨んだ。
玉座に座るグレンの眼光は鋭いが、その奥には底知れない野心が揺らめいている。
王は昨日の圧倒的な力を見てもなお、彼らを「制御可能な兵器」として自国に取り込む道を探っていた。
「サキモリよ。貴殿らの力は認めるが、国家という巨大な構造を維持するには、個人の武力だけでは限界がある。どうだ、我が国の『至宝』として、相応の地位と権力を受け入れる気はないか?」
グレンの言葉は一見すれば懐柔の提案だが、その本質は所有欲に根ざしている。
サキモリは王の瞳の奥にある計算を静かに読み解き、微かに微笑んだ。
その微笑みは、丁寧でありながらも、すべてを見透かしたような深みを持っている。
「王よ。あなたはまだ、私たちが御せる『道具』である可能性を捨てきれないようですね」
サキモリの声は穏やかだったが、謁見の間の空気が一変した。
サキモリは一歩前に出ると、静かに提案を口にする。
「では、私たちが道具かどうか、試してみますか?」
その言葉に、周囲の近衛兵たちが色めき立つ。
サキモリは続けて、対価としての条件を淡々と提示した。
「代わりに、もし私たちが勝利したなら、条件を二つ。
一つは、私が調合スキルで使用するための希少な素材の提供。
もう一つは、新しいスキルの品定めのために、この国の叡智が詰まった禁書庫の書籍を貸し出していただきたい。……いかがでしょうか?」
グレンは不敵に笑い、その挑戦を受け入れた。
彼にとって、サキモリたちの底を見極める絶好の機会であり、素材や書籍など、彼らを手中に収められるなら安い代償に過ぎない。
「面白い。ならば、我が国が誇る精鋭部隊との演習を許可しよう。貴殿らの価値、その身で証明してみせよ」
それは「力試し」という名を与えられた、一方的な蹂躙の幕開けであった。
サキモリの瞳には、すでに戦いの結末とその先にある知識の集積が、明確な構造として描き出されていた。
(第百七十四話へ続く)




