表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第五章 第六部:帰還と「半神」の威圧

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
163/183

第百六十三話:【嵐の前触れ:獣の遠吠え】

第百六十三話:【嵐の前触れ:獣の遠吠え】


外交官の震える指が、獣の紋章が刻印された羊皮紙を広げる。


それは東方の人類諸国連合の一角、獣人国カーマインからの正式な通告であった。


書状が読み上げられるにつれ、列席する幹部たちの顔から血の気が引いていく。


記されていたのは、共闘の要請ではなく、一方的な隷属の宣告であった。


・「盾の盟約連合」の即時解散。


・加盟各国が保有する軍戦力の二割を、対魔族戦線への補填として徴兵すること。


・獣人国カーマインへの完全従属。


そして、最も不遜な一条が読み上げられる。


「ジャバウォックを屠った特異個体『サキモリ』、およびその随行者らの即時徴用」。


その文言は、サキモリたちの規格外の力を国家という機構に組み込み、「有効活用してやる」という支配欲に満ち満ちていた。


「……故郷の祖国のような物言いですね。懐かしいです」


サキモリが静かに呟いたその言葉には、かつての境遇をなぞるような冷徹な響きがあった。


しかし、その背後に控える三人の少女たちは、それぞれの温度でこの無礼な書状に反応を示す。


「ねえ、おじさん。あいつら、私たちが誰に従っているのか全然わかってないみたい。随行者だなんて、随分と滑稽な認識だね」


ルミナは呆れたように肩をすくめ、サキモリの顔を覗き込む。


その口調は親しげで軽やかだが、瞳の奥にはサキモリを道具扱いする者への、隠しきれない鋭い光が宿っていた。


「サキモリ様を、そのように……。あまりに悲しい考え方ですわ。


わたくしの魔法は、大切な方々を守るためにあります。このような不純な意思に汚されるくらいなら、わたくしがすべて包み込んで、穏やかに消し去って差し上げましょうか」


エレンはサキモリの袖をそっと掴み、潤んだ瞳で見上げながらも、その身から漏れ出す魔力は静かな怒りを帯びて清冽に澄み渡る。


「サキモリ殿。私の盾は、正しき理を守るためにある。


国を背負う誇りなき者に、この剣を振るう価値はない。彼らの不遜な牙がこの地を汚すというのなら、聖騎士の誇りにかけて、一歩も通さぬことを誓おう」


アリサは腰の剣に手を添え、元団長としての凛とした口調で宣言する。


その視線は厳格な騎士のそれでありながら、隣に立つサキモリに対しては、全幅の信頼を預ける柔らかな決意が混じっていた。


サキモリは、三人の少女たちの人間らしい反応を受け流しながら、無表情に書状を見つめ続けていた。


構造は提示された。


あとは、この傲慢な「仕組み」をどう処理するか、それだけだ。


(第百六十四話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ