閑話休題【星霜の理:アステリアの残照】
閑話休題【星霜の理:アステリアの残照】
大陸アステリアは、今、巨大な天秤の揺らぎの中にあった。
大陸南東に鎮座するは大帝国クリスタ率いる【人類諸国連合】。
人類の領土の七割をその版図に収め、幾千もの兵と、現代兵器を凌駕する「聖剣」や「カウンタースペル」を操る勇者たちを擁する、人類最後の砦である。
彼らが東の防波堤として魔族の進軍を食い止めることで、人類の種としての存続は、かろうじて保たれていた。
一方、大陸の南中央部は長きにわたり、死の静寂に包まれていた。
「強欲の魔王」が配下、小魔王ジャバウォック。
その支配により中央の四カ国は国交を断たれ、情報の空白地帯――歴史から切り離された孤立無援の檻となっていたのだ。
しかし、一人の勇者「サキモリ」によるジャバウォックの討伐は、この檻を粉砕した。
「盾の盟約連合」の結成と、途絶えていた東方との国交回復。
それは単なる勝利の報告ではない。
帝国クリスタを中心とした人類の連携に、中央からの新たな「バグ」が介入するという、大陸全土を揺るがす政変の号砲であった。
だが、世界を覆う影は、未だ底知れぬ深淵を湛えている。
魔族の勢力圏、その最奥に座すは「無欲」の魔神王。
そしてその意志を執行する、大罪の名を冠した七人の魔王たち。
怠惰、憤怒、色欲、強欲、暴食、嫉妬、そして傲慢。
彼ら七魔王は、それぞれが一つの国、あるいは一つの概念を滅ぼすほどの力を持ち、ジャバウォックのような小魔王を軍団長として手駒のように扱う。
人類が手にした「中央の解放」という小さな光。
それは魔族の巨大な機構からすれば、不愉快なノイズに過ぎないのかもしれない。
しかし、そのノイズが共鳴し始めたとき、アステリアの不変の構造は、ゆっくりと、だが確実に崩壊へと向かい始める。
仕組みは提示された。
あとは、その上を歩む駒たちが、いかにしてこの過酷な盤面を塗り替えていくか。




