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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第五章 第三部:【四位一体:神域への抵抗】

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第百五十話:【敗北の美学】

第百五十話:【敗北の美学】


三度。


世界を白無へと還す古龍の極光が、聖域の頂を焼き尽くした。


アイギスの盾は、ブレスの奔流に晒されるたびに粉々に砕け散り、そのたびに四人の執念が破片を繋ぎ止め、新たな「門」を再構築した。


アリサの咆哮、エレンの魔力、ルミナの演算、そしてサキモリの存在維持。


そのすべてが限界を超え、魂の最奥を削り出すことで、ついに最後の一撃が霧散する。


静寂が、戻った。


「……あ……」


最初に、アリサの腕から力が抜けた。


実体化していた概念盾が砂のように崩れ落ち、続いて四人は糸の切れた人形のように、赤く染まった雪原へと折り重なるように倒れ込んだ。


全リソースの枯渇。


九〇%の維持どころか、もはや指一本動かす魔力も、瞼を持ち上げる氣も残っていない。


サキモリの全身からは気化した血の霧が失せ、ただ酷使された肉体の熱だけが雪を溶かしている。


対する古龍ニドヘグは、依然として山のごとくそこに在った。


負傷は、眉間の鱗が一枚剥がれ、紺碧の血が一滴垂れたのみ。


四人が命を燃やし、世界の理を書き換えて挑んだ結果が、これだ。


完全なる、敗北。


しかし、次に続くはずの滅びの咆哮は響かなかった。


ニドヘグは、ボロボロになりながらも互いの手を握りしめ、重なり合って倒れる四人の「羽虫」を、静かに、ただ静かに見下ろしていた。


そこには、もはや当初の退屈な観測も、一瞬の激憤もなかった。


あるのは、理解を超えたあがきを見せた者たちへの、深淵のような敬意オマージュ


「……げほっ、……はは。……やはり、化け物……ですね」


サキモリは、隣に倒れるアリサの手を握り返し、霞む視界で竜を見上げた。


勝てなかった。届かなかった。


だが、四人の魂が一つに溶け合ったあの瞬間、彼らは確かに神の領域にその爪痕を残した。


その「確かな手応え」が、敗北の虚無を塗りつぶしていた。


ニドヘグが、大きく一つ、深呼吸をする。


その巨躯から発せられたのは、大気を震わせる物理的な声ではなく、意識の奥底に直接響く「意志」の波動だった。


『面白い。……羽虫が、我が記憶に――消えぬ「傷」を刻んだか』


竜の瞳が、黄金の光を湛えて細められる。


それは、弱者を切り捨てる拒絶の光ではない。


己が認めた強者へと贈る、試練の終わりと、新たなる契約への「招待」の響き。


聖域の空が割れ、竜の体から溢れ出した魔力が、横たわる四人を優しく包み込んでいく。


(第百五十一話へ続く)

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