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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第五章 第三部:【四位一体:神域への抵抗】

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第百四十九話:【竜の逆鱗】

第百四十九話:【竜の逆鱗】


白銀の雪原に落ちた、たった一滴の紺碧。


それが、数万年揺らぐことのなかった古龍の誇りを踏みにじる「傷」であると、聖域そのものが理解した。


ニドヘグの瞳から静寂が消え、底知れぬ怒りの奔流が溢れ出す。


周囲の温度は瞬時に絶対零度へと急落し、大気は凍結して砕け、空間そのものが軋みを上げた。


ニドヘグは巨大な喉を震わせ、内側から青白い光を漏らす。


それは先ほどの「溜息」ではない。


世界を無に還す真の「ブレス」の胎動だった。


「――っ、来る! 全員、アリサの後ろへ!」


サキモリの叫びが響く。


だが、逃げ場など存在しない。


竜のブレスの有効射程は、この山頂すべてを飲み込んで余りある。


「やらせません……! この盾は、誰にも抜かせないッ!」


アリサが前へ踏み出す。


彼女は自身の全存在、全魔力、そして騎士としての魂のすべてを概念盾『アイギス』へと流し込んだ。


展開された盾は、もはや光の壁ではない。


実在する「理」を遮断する巨大な門扉――世界の終焉を食い止めるための最終防壁へと変貌を遂げていた。


「おおおぉぉぉッ!」


ニドヘグが口を開く。


放たれたのは、熱量と冷気が矛盾したまま衝突し、物質を原子レベルで消滅させる「無の極光」だった。


ガギィィィイイインッ!!


ブレスがアイギスに直撃し、世界が白濁した光に飲み込まれる。


アリサの絶叫が轟く。


腕の骨が軋み、肉が裂けるような衝撃。


だが、彼女は一人ではなかった。


「支えます、アリサ……倒れることは許さない!」


サキモリが背後からアリサの背中に両手を当て、自身の重心と「気」をすべて盾の強度へと転換する。


「私の魔力、全部持っていきなさいッ!」


エレンがアリサの肩に手を置き、無限に近い魔力の奔流をアイギスへと流し込む。


『盾の構造、秒間三万回の超高速修復リビルド開始! 粒子レベルで繋ぎ止めて、絶対に壊させない!』


ルミナの意識が、ブレスによって削り取られる盾の表面を、瞬きするよりも早く再構築し続ける。


文字通りの総力防衛戦。


アリサという「門」を、サキモリが支え、エレンが燃やし、ルミナが繋ぐ。


四人の魂がアイギスの一点において、一つの強固な意思へと溶け合っていた。


極光の奔流が荒れ狂い、周囲の岩石が瞬時に蒸発していく。


激しい光の渦中で、盾が砕ける鈍い音が、心臓の鼓動のように重く響いた。


「……ッ、まだだ! まだ、消えさせないッ!」


視界が白く染まり、感覚が消失していく。


四人の意識が境界を失い、一つに重なり合う極限状態の中、アイギスの輝きだけが、神の怒りに抗う唯一の灯火として燃え続けていた。


(第百五十話へ続く)

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