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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第五章 第三部:【四位一体:神域への抵抗】

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第百四十八話:【一瞬の一〇〇%】

第百四十八話:【一瞬の一〇〇%】


竜の眉間。


その絶対的な防壁の奥に、唯一「理」が剥き出しになる場所――逆鱗の隙間を、サキモリの網膜が捉えた。


「全員……一瞬、預けます」


サキモリの言葉と同時に、三人のヒロインとのリンクが異常な輝きを放つ。


九〇%という安定の限界を捨て、サキモリは存在の最深部にあるレバーを、迷いなく最大まで引き倒した。


出力、一〇〇%。


その瞬間、世界の解像度が「ノイズ」によって崩壊した。


常人の三倍を超える心拍。


血流と肉体の耐久力は三十倍へと跳ね上がり、生命力、出力、タフネスは九〇倍という異常なまでの飛躍を遂げる。


「――っ、が、ぁ……ッ!」


サキモリの全身の毛細血管と神経が、溢れ出す奔流に耐えきれず断裂と再生を、刹那の間に数千回繰り返す。


終わりなき激痛が全身を焼き、肉体から立ち上る血液は気化して不気味な「黒い霧」となって彼を包み込んだ。


身体の輪郭が現実の物理法則から剥離し、淡い光の粒子となって霧散し始める。


それは個体が許容できる魂の燃焼を完全に超えた、神域への片道切符だった。


(消えさせない……! 私たちが、あなたをここに繋ぎ止める!)


意識の中に、三人の力強い叫びが響く。


霧散しかけるサキモリの存在を、ルミナ、エレン、アリサが自らの魂の重みで現世へと強引に繋ぎ止める。


三人の魔力と絆が、この壊れゆく「最強の仕様バージョン」を維持するための強固な外骨格となっていた。


「――中段、正拳突き」


黒い霧を纏ったサキモリが、静かにその右拳を突き出す。


近代戦術の極致たる、最短の軌跡。


三人の底なしの魔力がその一拳に凝縮され、全エネルギーが分子レベルの極小の「針」へと変換される。


時間が停止したかのような静寂。


物理的な「重さ」を超え、概念的な「理」すらも貫く至高の一撃。


――……。


音そのものが消失した。


音速を、そして知覚の限界を置き去りにした正拳が、古龍ニドヘグの眉間に吸い込まれるように着弾する。


一呼吸置いて、世界を粉砕するような爆音が聖域に轟いた。


「おおおぉぉぉッ!」


凄まじい衝撃波がサキモリの拳から逆流し、周囲の空間をひび割れさせる。


神の装甲、不動の象徴であった竜の皮膚。


そこに、一〇〇%の「黒い一撃」が理をねじ込んだ。


カラン、と。


永遠に等しい時を刻んできた結晶質の鱗が、一枚、無残に弾け飛ぶ。


紺碧の血が、一滴。


白銀の雪の上に鮮烈な赤を刻む。


それは数万年の歴史の中で、いかなる天災も、いかなる軍勢も成し遂げられなかった「明確な負傷」であった。


サキモリの存在が、三人の手に引かれるようにして霧散の淵から実体を取り戻す。


気化した血の霧が雪原に降り積もる中、古の王の瞳に宿る色が、静かな観測から「激憤」へと一変した。


(第百四十九話へ続く)

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