第百四十六話:【テトラ・リンク、フル稼働】
第百四十六話:【テトラ・リンク、フル稼働】
「システム、オールグリーン。接続、深度最大へ」
サキモリの声が、四人の精神の深淵で共鳴した。
常時九〇%。
かつては魂を摩耗させ、存在そのものを霧散させていた禁忌の出力。
だが今は、背後に立つルミナ、エレン、アリサがサキモリの希薄な輪郭を外側から強固に繋ぎ止め、現世へと固定する「楔」となっていた。
彼女たちがサキモリという存在を維持し、燃え尽きようとする魂を肩代わりして補強する。
その盤石な基盤の上で、サキモリの脳は核となり、三人の感覚、魔力、視界を一つの戦術ネットワークへと統合した。
「エレン、第一フェーズ」
『了解……!』
後方に位置するエレンが、聖域に漂う超高密度のマナを強引に引き寄せ、一本の矢へと収束させる。
放たれた高密度魔力矢は、竜の眼球――唯一の露出した粘膜を正確に狙い撃つ。
ニドヘグが巨躯に似合わぬ速度で頭を動かし、視線だけでそれを霧散させた。
だが、その「意識の誘導」こそがサキモリの狙いだった。
「アリサ殿、今です」
『おおおぉぉぉッ!』
反対側から、アリサが爆音を響かせて跳躍した。
その手に握られているのは、もはや盾という概念を超えた、山をも穿つ巨大な質量の塊。
魔力によって再構築された「巨大概念盾アイギス」が、音速の壁を突破し、空間そのものを圧縮しながら竜の側腹部へと叩きつけられる。
質量突撃。
ドォォォォォォンッ!!
「個」の力では止まっていた時間が、連携という歯車が噛み合ったことで、爆発的に加速していく。
サキモリの指揮下で、エレンの狙撃が竜の意識を散らし、ルミナの演算が物理法則の歪みを補正し、アリサの質量が絶え間なく衝撃を刻む。
四位一体の機動力は、山脈そのものである巨躯を翻弄し、聖域の白銀を極彩色の魔力光で塗り替えていく。
「……ッ、いけます。このシステムなら、届きます!」
アリサの突撃を受けたニドヘグの巨躯が、初めて、明確に揺らいだ。
その巨山のような足元に、一筋の亀裂が走る。
サキモリの瞳に、勝利への論理回路が鮮やかに描かれた。
存在を維持する絆がある限り、彼がその「存在」を燃やし尽くすことはない。
神の如き竜の支配に対し、羽虫たちが構築した「理」が、今、確実にその牙を届かせようとしていた。
(第百四十七話へ続く)




