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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第五章 第二部:【竜の暇つぶし:個の限界】

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第百四十五話:【不合格の宣告】

第百四十五話:【不合格の宣告】


古龍ニドヘグは、深淵を湛えた眼差しをサキモリから逸らした。


その無関心は、鋭利な刃物よりも冷徹にサキモリの存在価値を否定していた。


竜が発した「言葉」ではない意志が、聖域の空気に直接刻み込まれる。


――器は既に壊れ、知恵という名の小細工を弄するだけの欠陥品。


独りでは神の領域に一ミリも届かぬ、無力な羽虫。


それがニドヘグが導き出した、サキモリという個体への最終評価であった。


だが。


雪原に膝を突き、全身から鮮血を流すサキモリの唇が、不自然に吊り上がった。


「……ハ、ッ……。不合格、ですか。それは……最高の誉め言葉です」


掠れた声。


しかし、その瞳には絶望の色など微塵もなかった。


サキモリは折れた肋骨を庇いながら、ゆっくりと、しかし確かな動作で立ち上がる。


血に塗れた顔に浮かぶのは、狂気とは異なる、冷徹な勝利の確信だった。


「確かに、私は欠陥品です。二十年の戦場で心を削り、この世界へ来る頃には、独りでは何も生み出せない『防波堤』へと成り下がっていました」


サキモリは一歩、竜の視線の先へと踏み出した。


「ですが……お忘れですか? 私が一人で戦うのは、この世界に召喚される前の『古い仕様バージョン』の話です」


サキモリの言葉と同時に、背後で爆音のような魔力の震動が響いた。


ニドヘグがその巨躯を僅かに震わせ、視線を戻す。


そこには、竜の絶対的な重圧を「自力で」撥ね退け、立ち上がる三人の影があった。


「おじさんを……これ以上、傷つけさせない……ッ!」


「サキモリ様を欠陥品と断じたこと、その傲慢、後悔させて差し上げますわ!」


「サキモリ殿、お待たせしました。……盾は、ここにあります!」


ルミナが演算の海を掻き乱し、エレンが魔力の奔流を束ね、アリサが折れない意志を金剛の壁へと変える。


サキモリが独りで戦い、無様に敗北を演じていた時間。


それはただの暇つぶしではない。


三人が竜の重圧に「適応」し、その支配構造を内部から食い破るための、血を流して稼いだ極限の「時間稼ぎ」だったのだ。


「私一人の限界など、最初から計算の内(前提)ですよ」


サキモリの背後に、ルミナ、エレン、アリサが整列する。


連結リンクが再起動し、断絶されていた魔力のパスが、以前よりも太く、熱く、四人の魂を接続した。


サキモリの「脳」を核とし、三人の「力」を四肢とする、単一の戦闘システム。


「さあ、始めましょうか。これが――最新のアップデートを終えた、私たちの戦い方です」


竜という理不尽に対し、羽虫たちが牙を剥く。


聖域の空気が、かつてないプレッシャーによって真紅に染まり始めた。


(第百四十六話へ続く)

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