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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第五章:【竜の聖域編】

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第百三十七話:【雪のエレメンタル】

第百三十七話:【雪のエレメンタル】


垂直に近い氷の絶壁を、サキモリは一歩ずつ抉るように進む。


エレンの魔力ブーストを受けたサキモリの腕が、凍てついた雪原を砕き、ヒロインたちのための足場を強引に作り出していた。


だが、自然という暴力に追い打ちをかけるように、吹雪の向こうから「それ」は現れる。


輪郭の定まらない、巨大な雪の塊。


物理透過能力を持つ「雪のエレメンタル」だ。


それは数時間おきに、まるで一行の体力が尽きる瞬間を狙うかのように、静寂の中から這い出してくる。


「……また来ましたわ! 矢が、魔法が、相手に当たる前に消えてしまいます!」


エレンの放つ火炎魔法から作り出した魔法の矢ですら、過酷な環境と吹雪、高濃度の冷気大気によって着弾前に霧散させられる。


エレメンタル自体は触れられれば、その瞬間に細胞の一つ一つが凍結し、崩壊する即死の抱擁。


「アリサ殿、焦る必要はありません。敵の『透過』は、魔力波形を環境の冷気に同調させているに過ぎない」


サキモリは掘削の手を止めず、背後のアリサに冷静な指示を飛ばす。


「アイギスの表面に『熱伝導率』を極限まで高めた魔力のスパイクを形成してください。硬度ではなく、エネルギーの『移動速度』を優先するのです。相手が触れた瞬間に、その凍結エネルギーを逆流ハックさせます」


「熱伝導……逆流……。はい、やってみせますッ!」


アリサはサキモリの「論理」を瞬時に理解した。


展開された概念盾『アイギス』の表面から、真紅に熱せられた幾千の魔力棘スパイクが突き出す。


それはただの熱い棘ではない。


冷気という負のエネルギーを、アイギスのスパイクが「触媒」となって強制的に吸収、強固な魔力へと変換し、敵の構造そのものを内部から焼き切る「攻防一体」の術式だ。


「はぁッ!」


襲いかかるエレメンタルを、アリサは盾で真っ向から受け止めた。


接触した瞬間、敵の冷気はスパイクを通じてアリサの魔力に上書きされ、物理透過の理を失った雪の塊へと「固定」される。


直後、熱を帯びた魔力が棘の先端から爆発的に放たれ、エレメンタルは内側から粉砕された。


「……倒せました! 敵の冷気が、私の盾を支える力に……!」


サキモリの「相性メタ戦術」を完璧に習得し、戦いの中で進化してみせたアリサ。


ただ守るだけだった盾が、今は「理」を逆手に取った最強の矛へと変貌を遂げている。


だが、敵を退けるたびに、周囲の気温はさらに異様な低下を見せ始めた。


「……気温、さらに氷点下五度低下。大気の抵抗が増しています」


サキモリの観測通り、山そのものが明確な殺意を持って一行を拒絶していた。


登れば登るほど、世界は色を失い、侵入者の体温を最後の一滴まで吸い尽くそうとする「山の意志」が、静かに、しかし確実に牙を剥く。


(第百三十八話へ続く)

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