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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第三章:精霊の大森林編

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第百三十二話:【静寂の武、極限の歩法】

第百三十二話:【静寂の武、極限の歩法】


精霊王が軽く指を振る。それだけで、玉座の床から無数の魔力の触手が、鋭い槍となってサキモリを貫こうと突き出した。


だが、サキモリは動かない。否、動いているように見えない。


触手の先端が彼の喉元を裂く寸前、サキモリの体が数ミリだけ横へ「滑った」。跳躍も、加速もしていない。ただ、肺の空気を抜き、重心をわずかに親指の付け根へ移しただけ。たったそれだけの、呼吸にも似た所作で、死の一撃は虚空を突いた。


「……何をした」


精霊王の声に、困惑が混じる。王の目から見れば、サキモリの身体能力は間違いなく「一〇%」――農夫や子供と変わらぬ、脆弱な生き物のそれだ。本来なら、魔力の余波だけで消し飛ぶはずの存在。


しかし、サキモリは止まらない。


武の極致:内部制御


サキモリは二十年間の地獄で、肉体がボロボロになっても戦い続けるための術を練り上げてきた。それは「力」に頼る武ではなく、自身の「構造」を統べる技術。


・血流コントロール: 必要な部位にのみ血液を集中させ、最小の酸素で筋肉を駆動させる。


・重心の消失: 予備動作となる「踏み込み」を消し、静止状態から最大効率の移動へ直結させる。


精霊王が放つ物理的な一撃が、サキモリの側頭部を掠める。だが、サキモリは首を振ることすらしない。顎の角度をわずかに変え、衝撃の「波」を逃がす。派手な魔法も、輝くオーラもない。ただ淡々と、無機質に「歩く」だけで、神域の攻撃を無効化し続けている。


その身のこなしは、あまりに洗練されすぎているがゆえに、精霊王には「止まっている」ようにすら見えた。


「お前……本当に人間か? その脆弱な肉体で、なぜ我がことわりの外にいる」


精霊王が苛立ちを募らせ、広範囲の魔力圧を叩きつける。だがサキモリは、圧力の「隙間」――魔力が最も希薄な座標を本能的に嗅ぎ分け、そこを縫うように歩を進める。


「……出力が低いなら低いなりに、戦い方はあります。二十年間、弾雨の中を歩き続ければ、これくらいは身につきますよ」


サキモリの瞳は、王の攻撃を見ていない。彼は回避の最中、床に転がる名もなき鉱石や、壁に這う地衣類を指先でかすめるように触れていた。


サキモリの「仕込み」


王の猛攻は苛烈さを増すが、サキモリの衣類にさえ土埃一つ付かない。攻撃が一度も掠らないという異常事態に、王の思考に微かな「ラグ」が生じる。


その隙に、サキモリは屈み込むこともなく、足元に転がる石を分解デコンパイルし始めていた。彼の足跡からは、この森には存在しないはずの、鼻を突くような鋭い異臭が漂い始める。


「……さて。技術の展示はこれくらいにしましょう。次は、『理科サイエンス』の時間です」


(第百三十三話へ続く)

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