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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第三章:精霊の大森林編

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第百三十一話:【精霊王の最終試練・10%の劇薬編】 【隔離された観測者】

第百三十一話:【精霊王の最終試練・10%の劇薬編】 【隔離された観測者】


精霊王の玉座の間は、静謐という名の暴力に満ちていた。


一行が足を踏み入れ、挨拶を交わすよりも早く、事態は動く。精霊王が退屈そうに指先を弾くと、空間が幾何学的に歪んだ。


「きゃっ!? 何ですの、これ……!」


「サキモリ殿! 盾が、体が動きませ――」


悲鳴にも似た声は、黄金の結界の向こう側へと吸い込まれていく。アリサ、エレン、ルミナの三人は、それぞれ不可視の隔離壁によって物理的に分断された。


サキモリへと繋がっていた情報回線バイパスが、無残に焼き切られる。


「……出力、一〇%まで低下。心拍、血圧、正常。……少し、体が重くなりましたね」


サキモリは、自らの内にあった「万能感」が霧散するのを感じた。今の彼は、時速百キロで海を駆ける怪物でも、空間を割る剣聖でもない。


ただの、二十六歳の男だ。身体能力は一般の村人と大差なく、精霊王の放つ神威プレッシャーだけで肺が潰れそうなほどの負荷がかかっている。


「脆いな、人の子よ。まるで寄生虫のようだ。三人の支えを失えば、お前はただの塵に等しい。……その程度の器で、我が森の深淵を覗こうとしたか」


精霊王の嘲笑が、大気を震わせる。


だが、三人を隔離され、最弱の「一〇%」へと突き落とされたサキモリの瞳に、絶望の色は微塵もなかった。


彼はゆっくりと、周囲を見渡した。玉座の装飾に使われている鉱石、床に敷き詰められた苔、大気中に漂う高濃度の精霊魔力――。


サキモリの脳内では、もはや「力」の計算ではなく、この空間にある全ての物質を「兵器の材料」として再定義する、冷徹な観測が始まっていた。


「……寄生虫、ですか。確かに、彼女たちが居なければ私はこの世界のルールを上書きすることはできません」


サキモリは乱れた呼吸を整え、武人としての正拳を静かに構える。その足元、踏みしめた床の苔から、微かに「化学変化」の匂いが立ち上った。


「ですが、一人にされたからといって、私が『無力』だと定義するのは、いささか早計ですよ」


(第百三十二話へ続く)

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