表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第三章:精霊の大森林編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
132/138

第百三十三話:【理科(サイエンス)の毒】

第百三十三話:【理科サイエンスの毒】

「……これで、材料リソースは揃いました」

サキモリの回避は、もはや円舞に近い。

精霊王が繰り出す魔力の触手。その猛攻を「歩法」だけでいなす合間に、彼は指先で壁の鉱石を砕き、床の苔をむしり取っていた。

一般に異世界の「調合」スキルとは、薬草を煎じ、魔力を込めて回復薬を作る聖なる業だ。

だが、サキモリの解釈は違う。彼にとっての調合とは、戦場にある物質を分解し、敵を殺すための「化学反応」を設計する工程に過ぎない。

サキモリは、抽出した塩素と水素を自身の微弱な魔力で繋ぎ合わせ、即座に高濃度の「塩酸」を生成する。

それを精霊王の放つ熱量を利用して最適に気化させ、自分を包み込むような「目に見えないガスの膜」を構築した。

「逃げ惑うのもそこまでだ、人の子よ。我が魔力を直接注ぎ込み、その矮小な魂ごと焼き切ってくれよう!」

精霊王が、勝ち誇ったように笑う。

王はサキモリの回避が限界に達したと判断し、無数の魔力回線コネクタをサキモリの体に直接突き立てた。

王の意識が、サキモリの神経系へとダイレクトに接続される。

――その瞬間、王は「絶望」を味わうことになった。

「――!? な、なんだ……これは。我が感覚器官が……溶ける……!?」

魔力の接続は、情報の共有と同義だ。

サキモリの周囲に漂っていた「気化した塩酸」は、魔力の流れに逆流し、精霊王の繊細な魔力知覚器官へと直接吸い込まれていった。

ファンタジーのことわりで生きる精霊にとって、化学物質という「物理的な毒」に対する免疫など存在しない。

ただの数滴、たったコンマ数ミリグラムの酸。それが、神にも等しい精霊王の広大な神経ネットワークに、未知の「致命的エラー(致命傷)」として拡散していく。

「魔法は万能ではありません。……ただの『現象』である以上、それを阻害する物質は必ず存在する。近代戦においては、常識ですよ」

サキモリは、麻痺して動きを止めた魔力の触手を、冷徹な瞳で見下ろした。

精霊王の巨躯が、内側から生じたシステムダウンによって激しく痙攣する。

偉大なる森の王が、一人の「無力な人間」が仕掛けた理科サイエンスの毒によって、その場に膝を屈した。

(第百三十四話へ続く)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ