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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第三章:精霊の大森林編

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第百二十六話:【門番の試練・FCS(火器管制)編】 【非可視領域の標的】

第百二十六話:【門番の試練・FCS(火器管制)編】 【非可視領域の標的】


「……ここが、選別の門ですか」


サキモリの視線の先には、天を突くような『古樹の門』がそびえ立っていた。


近づく者を拒絶する高密度の魔力が編み込まれたその門の前に、透き通った翼を持つ精霊の守護者が降り立つ。


「異邦の者よ。試練を与えよう。……一週間以内にあの頂へ至り『精霊の灯火』を破壊して戻れ。さもなくば、この場で射抜いてみせよ」


守護者が指し示したのは、数キロ先――雲に隠れた『死の山脈』の山頂付近。


そこには親指ほどの小さな光が不規則に浮遊している。


「サキモリ様、見えますわ。……私の魔法視野なら、五キロ圏内の熱量は手に取るようにわかります」


エレンが弓を握りしめ、鋭い眼光を向ける。


亡国の姫君としての魔力は、数キロ先の標的を確かに「捉えて」いた。だが、彼女の眉根は険しく寄る。


「……標的は見えます。ですが、あまりにノイズが多すぎますわ。山からの吹き降ろし、魔力の乱気流……視認できても、矢を届かせる計算が追いつきません」


そう、この試練の本質は「視認」ではなく、到達までの「環境変数」の異常な複雑さにあった。


守護者が嘲笑を浮かべる。


「その通りだ、人の子よ。見えたところで何になる。その間にある空域は、精霊の気まぐれで秒単位で理が書き換わる。計算など、神にしか不可能だ」


「……計算、ですか。それは得意分野(専門)ですね」


サキモリは懐中時計を取り出し、ルミナから伝わる魔力の揺らぎを観測し始めた。


守護者が不可能と断じる「気まぐれな理」を、彼はただの「解析可能なノイズ」として処理していく。


「エレンさん、標的の座標データを私に。……ふむ。標的までの直線距離、約四二〇〇。仰角一五度。平均風速三・五メートル。……そして、考慮すべきはコリオリの力(観測上の慣性力)。地球の自転による偏差が、着弾点に無視できないズレを生みます」


「コリオリ? 地球の自転……? 何を言っているのだ、お前は」


守護者が呆然と呟く。


神秘の試練を、サキモリは淡々と「純粋な弾道計算の問題」へと解体していく。


「アリサ殿、その場に跪き、アイギスの盾を水平に固定してください。狙撃台プラットフォームとしての剛性が足りません。貴女の質量で土台をロックします」


「了解です、サキモリ殿! アンカー、セット!」


アリサが盾を地面に突き立てる。


物理安定の波動が、狙撃地点の微振動を完全に殺した。


「ルミナ先生、エレンさんの背後に。貴女の魔力を直接彼女の弓へバイパスし、出力を三割底上げ。矢の初速を上げ、滞空時間を削ることで環境ノイズの影響を最小限に抑えます」


「わかったわ、おじさん! 出力制御パワー・マネジメントは任せて!」


エレンをハブとして、三人の力が接続される。


サキモリはエレンの肩に手を置き、彼女の「魔法視野」に、計算済みの「仮想照準レティクル」をオーバーレイさせた。


「さて。一週間もかけて山登りをするのは非効率的です。エレンさん、準備を」


サキモリは、エレンの網膜に映る五キロ先の景色を「観測」し、引き金を引くタイミングを測る。


「……この程度の距離、私の世界では『十分に実用範囲内の長距離射程』の部類にすぎません」


(第百二十七話へ続く)

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