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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第二章:失われた技術の残光

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第百十八話:エレンの魔導、空を焼く

第百十八話:エレンの魔導、空を焼く


死の山脈の頂を越え、浮遊廃都セレスティアの外縁回廊に足を踏み入れた四人を待っていたのは、歓迎の調べではなく、空を圧する殺意の羽音だった。


「……来ます。高度三〇〇〇、雲の切れ間に熱源反応」


サキモリが静かに告げると同時に、青い空が急速に「影」に塗り潰されていく。


現れたのは、この山域の絶対的な支配者、巨大な怪鳥『クラウド・レイダー』の群れだ。

一羽一羽が軍用機にも匹敵する巨体。


それが六十四羽、統制の取れた機動で急降下を開始する。


「なんて数……! おじさん、これじゃ近寄る前に風の刃で切り刻まれちゃうよ!」


ルミナが声を上げ、サキモリの背中にしがみつく。


サキモリは揺らぐ自身の存在を固定しながら、空を見上げた。

魔法の使えない彼にとって、石や槍の投擲ではこの広域制圧には対応できない。


だが、彼には「仕組み」が見えていた。


「アリサ殿、正面。盾の角度を十五度上方へ。風の指向性を読み、衝撃を逃がしてください」


「承知した! 我が盾の背後、指一本触れさせはせん!」


アリサが巨大な盾を掲げ、突進してくる怪鳥の風圧を真っ向から受け止める。


轟音と共に火花が散るが、アリサの踏み込みは一歩も揺るがない。


「エレン、準備を。貴女の精密射撃に、私の計算した『火網ひあみ』を乗せます」


サキモリは、エレンの背後へと静かに回り込んだ。

彼女の手には、王都で新調したばかりの重厚な魔弓が握られている。


「エレン。貴女はもともと数キロ先を射抜く名手ですが、今回は『点』ではなく『面』で空を制圧します。……私の視界を、貴女の感覚に同期シンクロさせてください」


サキモリはエレンの震える肩を支え、その意識の奥底へ、自身の知る近代兵器の射撃管制ロジックを流し込んだ。


エレンの瞳に、魔法の輝きとは異なる「幾何学的な紋様」が浮かび上がる。


六十四羽の怪鳥それぞれの飛行ルート、速度、三秒後の予想位置。

それらすべてが、狙撃すべき座標として「光の点」で示されていく。


「……風速、西に四。湿度、高め。三、二、一。……今です」


サキモリの合図と共に、エレンが魔弓の弦から指を放した。


放たれた一矢は、空中で弾けるように分裂した。

それは魔法の奔流というより、極めて合理的に設計された「クラスター弾」の挙動に近い。


エレンの全魔力を乗せた「炸裂の概念」が、サキモリが算出した最適起爆点で一斉に開花する。


「――っ!?」


空が、白銀の爆炎に焼かれた。


不規則な機動で回避しようとした怪鳥たちは、逃げ場のない「火網」の中に自ら飛び込む形となり、次々と塵へと還っていく。


一度の射撃で、空を支配していた影の半分が消失した。


「……素晴らしい。想定通りの効率です、エレン」


サキモリは淡々と告げたが、魔弓を握るエレンの指先は、昂揚と驚きで小さく震えていた。


「……当たりましたわ。この距離、この速度を……一射でこれほど。サキモリ様、私……自分の力が、これほどまでに『形』を成すものだとは思いもしませんでしたわ」


かつての彼女にとって、遠距離射撃は一羽ずつ丁寧に仕留める「孤独な技」だった。


だが、サキモリという「観測手」を得たことで、彼女の技量は一国を焦土に変えかねない広域殲滅システムへと昇華されたのだ。


「……ええ。一人で投石を繰り返していた頃とは、比較にならない戦果です。エレン、貴女の腕に助けられました」


サキモリの唇が、ごくわずかに綻ぶ。


兵器の知識と、騎士の技。

二つの異なる理が連結したその瞬間、彼らはもはや「守られる側」と「守る側」の関係を超え、一つの完成された機構システムとして機能し始めていた。


だが、静寂が戻った回廊に、サキモリの冷徹な声が再び響く。


「……ですが、これで終わりではありません。セレスティアの中枢、先ほどの防衛システム以上の『不自然な反応』が加速しています。……行きましょう。この先に、私の仮説を裏付ける、真の遺物が眠っているはずです」


サキモリの視線の先、浮遊廃都の中央にそびえる白亜の塔が、青黒い不気味な光を放ち始めていた。


(第百十八話:完)

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