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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
第四幕・第二章:失われた技術の残光

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第百十七話:アリサの盾、鋼の決意

第百十七話:アリサの盾、鋼の決意


廃都セレスティアの心臓部、蒼白い燐光が満ちる円環の間。

突如、床の紋章が赤く明滅し、天井から巨大な四足歩行の防衛兵器――「守護騎士ガーディアン」が重低音を響かせて降下してきた。


これまでの自動人形とは次元の違う、圧縮された魔力の圧が空間を支配する。


「……迎撃します。エレン、出力を私の右手に固定。三割解放リミットオーバー――」


サキモリが右手を前に出し、その輪郭が陽炎のように歪み始めた。

存在の摩耗を代償にした、一撃必殺の演算。


だが、その腕が振り抜かれる直前、鋼の衝撃音と共に視界が「銀」に染まった。


「サキモリ殿、下がっていろ!」


アリサが割り込み、その巨大な盾で守護騎士の突進を真っ向から受け止めたのだ。

凄まじい衝撃波が円環の間を駆け抜けるが、彼女の一歩は微動だにしない。


「アリサ殿、危険です。今の私の出力なら、数秒で排除可能です。貴女が無理をする必要はありません」


「否! 貴殿が力を振るえば、またその存在が削れる。……ここは私の戦場です。サキモリ殿は、まだその拳を握る時ではない!」


アリサの叫びと共に、彼女の全身から黄金色の闘気が噴き上がる。

サキモリと繋がった魔力の糸が、アリサの盾を媒介にして強固な「防壁」へと変換されていく。


彼女の盾は今や、単なる鉄の塊ではない。

サキモリという存在をこの世界に繋ぎ止め、外敵からの干渉を一切遮断する「物理アンカー」そのものと化していた。


「エレン、支援を! ルミナ、サキモリ殿の固定を緩めるな!」


アリサの指示に、二人が即座に呼応する。

エレンが放つ牽制の雷光の矢が守護騎士の姿勢を崩し、ルミナがサキモリの背中で懸命にその存在の「揺らぎ」を抑え込む。


守護騎士の猛攻がアリサの盾に幾度も叩きつけられる。

だが、彼女は一歩も退かない。


それどころか、盾を支えにするサキモリに一切の衝撃を通さないよう、自身の魔力をすべて「守護」の純粋概念へと昇華させていた。


「……私は、貴殿の背を追うだけの騎士ではない。貴殿が歩むための道を、この盾で切り拓く『盾』なのだ!」


アリサの決死の盾撃が、守護騎士の装甲を粉砕し、その機能を沈黙させた。


静寂が戻った広間で、アリサは荒い息をつきながらも、サキモリを振り返り、不敵に笑ってみせた。


サキモリは、自分の前にそびえ立つ背中を見つめていた。

かつては自分が守らねばならない「守護対象」であったはずの少女。


だが今、彼女の盾の内側こそが、この世界で最も安全な場所となっている。


「……。アリサ殿。見事な防御構築です。私の演算による予測を、数パーセント上回る堅牢さでした」


サキモリの唇が、ごくわずかに、けれど明確に弧を描いた。

最強の兵器が、初めて自分の「弱さ」を仲間に委ね、それを肯定した瞬間だった。


「……次は、私も少しだけ頼らせてもらいます」


サキモリの言葉に、アリサは誇らしげに胸を張り、ルミナとエレンは安堵の溜息を漏らした。


(第百十七話:完)

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