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勇者召喚、ヤバいのが混じってた。 ~近代兵器と戦い抜いた男は、異世界で慈愛を振るう~  作者: 風水
【第二巻】第四幕・第一章:共鳴のアルカディア

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第百十五話:再出発、暁の門出

第百十五話:再出発、暁の門出


王都の正門には、溢れんばかりの群衆が集まっていた。

魔王ジャバウォックを討った英雄の門出。


だが、そこに立つサキモリの姿に、人々は一瞬、戸惑いの声を漏らした。


そこにいたのは、鉄の規律を象徴する冷徹な軍服姿の将校ではない。


ルミナが「動きやすさ重視」で選び、エレンが「品格」を添え、アリサが「機能性」を認めた、仕立ての良い旅装――一人の青年としてのサキモリだった。


「おじさん、似合ってるよ! やっぱりその格好の方が、ずっと話しやすいしね」


ルミナが、新調した背嚢を揺らしながら笑いかける。


「……そうですか。まだ、肩のあたりが不自然に軽い気がしますが、ルミナ先生」


サキモリは、階級章のなくなった自分の肩をそっと撫でた。


軍服という鎧を脱いだ彼は、以前よりもずっと細く、今にも陽炎のように消えてしまいそうに見える。


だが、その左右をアリサとエレンが、背後をルミナがしっかりと固めている。


三人が形成する「共振アンカー」は、目に見えない光の鎖となって、サキモリの希薄な存在をこの世界に強く縫い止めていた。


「サキモリ様、そんなに硬くならないでくださいまし。私たちはもう、軍の駒ではありません。自由な『アルカディア小隊』なのですわ」


「うむ。サキモリ殿、貴殿が倒れそうになれば私が支える。貴殿の歩みは、我ら四人の歩みなのだ、エレン、ルミナ殿」


エレンの柔らかな微笑みと、アリサの力強い言葉。


サキモリは、かつての自分なら「非効率だ」と切り捨てていたであろうその温かさを、今は静かに噛みしめていた。


「……了解しました。一人では一歩も進めない『欠陥兵器』ですが……貴女たちがいれば、三割の出力で世界を歩き通せる。その可能性ロジックを信じましょう。アリサ殿、エレン。……ルミナ先生」


サキモリの口元が、わずかに、本当にわずかにだけ綻ぶ。


それは、彼が召喚されて以来、初めて見せた「計算外」の晴れやかな表情だった。


歓声に包まれながら、四人は王都を背に、未知の「死の山脈」へと歩み出す。


その頃、遥か彼方。


厚い暗雲に閉ざされた魔王城の謁見の間。


「ジャバウォックが、消えたか」


玉座に座る影が、冷たい声を響かせる。


一柱の魔王の死は、大陸の均衡を根底から揺るがしていた。


他の魔王たちは「未知の脅威」を排除すべく蠢き始め、同時に人類の王たちも、サキモリの存在を危険視、あるいは利用しようとする他国の軍靴の音と共に、静かに近づきつつあった。


世界という巨大な盤面ボードが、かつてない速度で再構築されていく。


だが、街道をゆく四人の足取りは、驚くほど軽い。


絶望的な戦力差も、迫りくる他国の謀略も、今の彼らにとっては「これから解決すべき問題」に過ぎない。


朝日が、四人の背中を白く染め上げる。


兵器の落日は、冒険の夜明けへと書き換えられた。


(第一章:完)

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